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王子の意図
結局、美しい馬たちはプライドも高かった様で、僕のことはまるっきりシカトしてくれた。僕も10日ほどしかここにはいない約束だったので、別に下手に出ることもないだろうとポツンと大人しくしていた。
リーダーは、昨日僕に話しかけてきた白馬だった様で、僕は何だか雰囲気の悪いところだなぁと正直くさくさしていたんだ。まったく、王族の護衛聖騎士の馬がどれほど偉いっていうんだ。
僕たち騎士団の馬は身体を張って、この国を守ってるんだ。僕のそんな気持ちが伝わったのかどうか、それか僕があまりにもワイルド過ぎたのか、やっぱり聖騎士の馬たちは僕を遠巻きにしていた。
僕は開き直ってシャクシャクとりんごを食べていた。ここのりんごは、騎士団のものより少し美味しい気がするのがちょっぴり悔しかった。…いっぱい食べなきゃ。
暇にあかせて食べ続けて少しお腹が水っぽくなった頃、馬丁が僕に近寄って来て、僕を呆れた様に眺めながら話しかけてきた。
「フォル、随分よく食べるんだな?成長期か?ははは。さぁ、殿下がお待ちだ。約束の時間まで一刻もないから急ぐぞ?」
僕は耳をそば立てて首を引き上げた。え?王子とこれから会うの?何だろう。僕がここに来たことと関係あるんだろうな。ちょっと好奇心がくすぐられるよね。王子はまだ少年だから、何を考えてるのか全然分かんないな…。
そう思っていた時もありました。目の前の殿下は僕の周囲をぐるぐる回りながら、何か確認する様に頷いたんだ。そして、僕の顔に手を添えて、額の白く輝く(らしい)星型を指でなぞると小さな声で呟いた。
「…やっぱりこの馬は人馬なんじゃないかな?ねぇ、…フォル。君って本当に馬なのかい?」
それは小さなささやきだったので、周囲に控えている馬丁や、聖騎士、従者の耳には入らなかっただろう。でも僕にははっきり聴こえてしまったし、何なら凄くびっくりして、思わず反応してしまったんだ。
思わず仰け反って、目を見開いて、息を吸い込んでブヒブフ言ったら、馬丁が慌てて側に走り寄って来た。
「よしよし、フォル、何驚いてるんだ?落ちつけ、ドウドウ。」
あ、ヤバ。僕は恐る恐る王子の顔を伺った。すると王子は満面の笑みで頷いて言った。
「やっぱり。そうだと思ったんだ!」
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