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真夜中の秘密
「…其方が本当にさっきまでフォルだったのか?」
第二王子にそう尋ねられて、僕はウィルの顔を見て、また驚きに満ちた王子の顔を見つめて頷いて、礼を取ると言った。
「…はい。ハルマ シミズと申します。殿下にご挨拶できる事を嬉しく存じます。先だってフォルの時は、色々とご無礼があったかもしれませんが、そこは馬の成せること。お許しくださいます様にお願い申し上げます。」
第二王子は堪えていた息を吐き出すと、声を上げて笑い出した。
「フォル!確かに其方の醸し出す雰囲気はフォルのままだ!何とも不思議なことだ。それに其方の見慣れぬ風貌も、私の持っている秘密の書に類似点を感じるぞ。
ああ、早く其方と検証したいものだ。何がどうなってこの様な不可思議な事が起きるのかと。」
王子の興奮冷めやらない感じは、いつまでも続きそうだった。しかし指揮官がそっと王子に声を潜めて言った。
「殿下、今宵は夜も遅く人目に着くのは何かと問題になるやもしれません。明日以降時間を持って対処頂ければ幸いに存じます。」
第二王子は指揮官の言葉にハッとすると、頷く従者と聖騎士を振りあおぐと、僕を見つめて苦笑して言った。
「よい。分かった。明日は私も都合が悪い。では明後日以降で調整して、是非とも検証させてくれ。良いか、ハルマ?」
僕は殿下に跪くと胸に手を当てて言った。
「はい。我が事ながら、自分でも今の移ろいゆく身の状況に振り回されるばかりでございます。是非殿下と共に検証に参加させて頂きたいと存じます。」
そう僕が返答したのを機会に、その夜の秘密の場は解散になったのだった。僕は薄い美しいローブ一枚の自分の姿に、急に恥ずかしさを覚えた。
指揮官たちは後ろ姿を見せながら、僕とウィルに手を振りながら言った。
「ウィル、明日は午後からの出勤で良いぞ。ハルマは一日休みだ。明日以降は王子に振り回されそうだから、ゆっくり休め。ハハハ。」
僕たちは彼らが妙に気を利かせてくれた事があからさまだと、照れ臭い気分だった。ウィルが僕をぎゅっと抱きしめると、僕は嬉しさ半分、馬臭さで気もそぞろで、そっと手を伸ばして押し退けると言った。
「ウィル、僕自分が凄く馬臭い気がして…。湯を使わせて?そうじゃないと、ちょっとウィルとくっつけないって言うか…。」
多分赤くなっているだろう僕の顔をなぞってウィルは言った。
「まったく、ハルになった途端にこれだ。ふふふ、綺麗好きなのは良いけど、そんなに臭いわけじゃないよ?」
僕は膨れツラをしてウィルに言った。
「ウィルは良くても、僕が無理なの!それに早くイチャイチャしたい…から、ね?」
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