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王子との対面
「其方がハルマか。明るい場所で見ると、なるほど、秘密の書は真実が書かれていたのだと、またひとつ確証が得られたね。」
そう言って綺麗な青い目をキラキラさせながら、目の前の殿下は嬉しそうに頷いた。年齢は確か14歳と聞いたが、14歳にしてはしっかりしている。まぁ、王族だし…。
僕は『王子様』と人間としてはどう接するのがベターなのか分からずに、副指揮官や、ウィルをチラチラ見つめた。するとクスクスと楽しげな笑い声をあげて、殿下が執務室?いや、勉強部屋?から僕たちを引き連れてちょっと変わったテラスへと連れ出した。
広いテラスは眼下に手入れの行き届いた美しい庭園が広がっていた。ただ見た事のないガラスの様なドーム型の屋根と囲いに囲まれていた。
殿下は僕たちにウィンクすると、唇に指を押し当てて言った。
「内緒話をするには、ここが丁度良いんだ。結構良いだろう?私が設計したんだ。」
僕は揺らめく様な虹色のガラス質の壁に手を触れた。あんまり硬くない。ちょっとプラスチックの様だ。柔らかな素材だからドーム型に加工も出来たのかもしれない。
これがガラスだとかなり重そうだ。そう思いながら天井を見上げた。僕が興味津々で見つめていると、殿下が声を掛けてきた。
「ハルマ、そろそろこっちに来て座れ。後で見学させてやるから。」
僕がハッとして殿下を見ると、副指揮官も、ウィルも、困った顔で既にテラステーブルに着席していた。僕は慌てて空いていた椅子に座ると、従者が待っていたかの様にお茶をサーブしてくれた。
殿下が美味しそうにお茶を飲むのを待って、僕も副指揮官に習って上品にお茶をいただいた。あー、美味しい。王宮半端ない。僕がお茶の美味しさに感動していると、殿下がじっと僕を見つめていた。
「ハルマ、其方はミハルという名前に覚えはあるか?」
僕は突然殿下に尋ねられて、ちょっとボンヤリしてしまった。まさか殿下の口からその名前を聞く事になるなんて、思いもしなかったからだ。
僕は心臓がドキドキするのを感じながら頷いた。
「はい。…ミハルという名前には覚えがあります。確か、僕のお祖父さんの兄の名前だと思います。でも彼は若くして亡くなっていて、僕は会ったことはありません。」
すると殿下は手に持っていた、美しいけれど少し年季の入った革張りの手帳をひと撫ですると言った。
「そうか。ミハルは若くして亡くなっていたのか。…それはまるで運命の悪戯の様だね。」
そう言いながら、少し悲しげな表情で微笑んだんだ。
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