パンチドリンク

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パンチドリンク

僕がハッとして目を開けると、目の前にウィリアムが心配そうに僕を覗き込んでいた。周囲の騎士達は面白そうに笑いながら僕に言った。 「おい、随分一気にいったな。あの紫の飲み物は魔物退治や、厳しい訓練の後に飲む気付け薬的なやつなんだ。酒ではないが、強烈なパンチがあるだろ?今の気分はどうだ?」 僕は恐る恐るテーブルから身体を起こすと、不思議なことに元気がみなぎって来ていた。僕は思わず身体に手を這わして言った。 「…何だろ。随分スッキリした感じがする。飲んだ瞬間強烈なパンチを受けたみたいだったのに。不思議です。」 僕は器に半分残っている紫の飲み物を覗き込んだ。横から手が伸びて来て、ウィリアムが残りを飲み干した。テーブルに手をついて首を俯けると、腕をプルプルと震わして耐えていた。 ふうっと大きく息を吐き出すと、僕にニコリと微笑んで言った。 「さぁ、まだ時間も早い。ハルマが必要なものをかき集めに行こうか。それと、何処か行きたいところはあるかい?」 僕はさっき窓から眺めた時に見えた厩舎へ行きたかったけれど、急にそんな事を言って変に思われたら困る。そこでうまく厩舎へ近づく方法を考えた。 「ここを見て回りたいです。僕に向いていそうな仕事があるかもしれませんし。」 僕はウィリアムに案内されながら、ぐるっと騎士団の敷地を歩いて回った。時々視線が突き刺さるけれど、僕は気にしない様にして、中世の世界観ならこんな感じなのかなと思いながら歩き進んだ。 僕がここで仕事をするとしたら、どんな仕事があるんだろう。僕は従者の仕事ぶりを眺めながら首を振った。馬時代ならともかく、僕に力仕事は無理だ。ただでさえここの人たちとは体格からして劣っているのに。 そうなると頭を使うしか無いけど。僕は大学受験で身につけたあれこれが役に立つといいなと思いながら、キョロキョロと興味深くウィリアムについて行った。 気がつけば、僕は厩舎の近くまで来ていた。僕はウィリアムを見上げて頼んだ。 「ウィリアムさん、僕、動物が好きなんです。もしかしてここは厩舎ですか?ちょっと覗いても構いませんか?」 丁度その時、厩舎からロイさんが出てきた。ロイさんはウィリアムを見ると近づいてきて話しかけた。 「ウィリアム様、フォルは森で見つからなかったそうですね。しかも怪物は木に刺さってコト切れていたとか。わしはそれを聞いて、フォルがそう仕向けたんじゃ無いかって、そう思ってしまいました。 あいつは子馬の頃からそうでしたけど、ちょっと変わったヤツでしたから。抜群に頭が良くて、機転も効いて。たぶん森で迷って、違う場所に出てしまって、今頃、誰かに面倒見てもらってるんじゃ無いですかね…。 一応、わしの方で馬丁繋がりの仲間達に、フォルを見かけたら連絡してもらう様に頼んで有りますから。まったく、あいつは人に心配掛けやがって。…大丈夫ですよ。きっと見つかりますから。」 そう言って、目尻を光らせてくしゃりと笑った。
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