209人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
色々しんどい
何だか口から泡でも吹いて倒れそう…。僕は久しぶりの訓練に参加して、正直へばっていた。それはそうだ。人間になってからと言うもの、筋トレ的なものはやっていなかったし、走ってもいなかった。
いくら馬の身体に戻ったとはいえ、人間時代の生活が出ちゃうんだろう。体力、筋力共に落ちていた。ロイさんは僕に呆れた顔をして言った。
「フォル、お前ここにいない間、何処にいたんだ?随分大事にされてたのか?こんなに肥えて、しかも走れなくなってるとは…。しばらく特訓だな?」
うわぁ、死亡宣告きた…。いきなり動いたら心臓止まりますよ!ロイさん!とはいえ、僕もすっかり動きの鈍った自分の馬生活をヤバいと感じていたので、ロイさんの指示する通り訓練を頑張った。
流石に馬の身体は回復力も凄まじかった。数日はヒィヒィ言って、情けない声をあげていた僕も、直ぐにあの軽やかな躍動感あふれる勘を取り戻していった。
時々僕の仕上がり具合を見に、ウィルが来てくれた。けれど、ロイさんのアドバイス通り、僕を鍛え直すべく訓練させるものだから、恨めしい気分でウィルを見つめる事になった。
会いたいけれど、会いたくないと言う微妙な気持ち…。そんな僕に栗毛のビッツはいちいち『だいぶマシ。』だとか、『ほんと最初見た時、あり得ないくらい鈍ってたよな。』とか、言ってくる。
僕は励ましてくれてるのか、おちょくってるのかわからずにビッツに尋ねた。
『なぁ、ビッツは僕を励ましてくれてるんだよね?』
するとビッツは口を大きく開いて歯を剥き出しにして言った。
『んー。面白がってる。』
そう言うと、笑いながら駆けていくものだから、僕は毛をむしってやろうと追いかけたけれど、まだ追いつけるほど身体が仕上がっていなかった。
僕が悔しい思いでぜーはーしていると、ビッツが戻ってきて言った。
『まぁ、もうちょっとじゃん?』
ほんとコイツは僕の敵なのか味方なのか立ち位置不明だ。まだ僕より全然中身は幼いからしょうがない。僕は大人モードを炸裂させてビッツに言った。
『ほんとビッツは可愛いな。僕のこと大好き過ぎて、構ってちゃんなんだから。僕もビッツのその素直じゃないところ大好きだよ?』
そう言うと、周囲の野次馬たちがゲラゲラ笑って、居た堪れない様子のビッツは凄い勢いで走り去ってしまった。ありゃ、ちょっとからかい過ぎちゃったかも。
それ以来ビッツが、僕の事をモジモジしながらストーキングするなんて、ちょっと予想外だった。マジで。どうしよう、馬生活でもBLとか、ヤバ。
最初のコメントを投稿しよう!