勝負の日

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勝負の日

ガチャガチャと鎧を鳴らして、騎士たちが続々と集まってきていた。僕もさっきロイさんに馬鎧をつけてもらった。僕の首下から胴体へ巻き付けるタイプの馬鎧は白でアクセントがついた黒光りするカッコいいものだ。 騎士団の馬鎧は、基本黒い質実剛健なかっこいいものだけど、それに各騎士が自分のオリジナルを出して色々アクセントをつける。僕のものは、額の白にあわせて白い紐を編み込んであって、白い房飾りが目立つところに付いている。 僕は一眼見てお気に入りになったし、周囲の評判も良かった。ちなみにビッツは真っ赤な房飾りがついてる。ビッツの騎士は赤毛のガハハタイプだから、やっぱりあの血の気が多そうなイメージなのかな。 その時騎士団長が台座に立って皆を見渡して言った。 「皆、連日の戦いで疲れも溜まっていることと思う。が、状況は我が国が優勢。このまま一気に突き崩しに掛かる。各隊のリーダーは戦略通りに隊を組んで作戦を確認せよ。今日が最終決戦と思って攻撃せよ!」 騎士達や兵士達の砦を震わせる様な雄叫びが辺りに反響した。う、うるさっ。隣のビッツも先輩も空気にのまれて、何だか興奮してる…。いや、聞いてなかった?今日はヤバいくらい突っ込んでいくんだよ? 僕が危なくなりそうな今日1日の事を考えていると、ウィルがやってきて僕を撫でた。いつものようにウィルを顔と首に挟んでむぎゅっとしたいし、されたいのに鎧のせいでままならない。 いつもそうするとウィルは僕の首に両手を回してぎゅっと僕を抱きしめてくれるんだ。そんな僕たちのラブラブな様子は、騎士達の揶揄いのネタだけど、ウィルは僕を溺愛しているのを隠そうともしないんだ。あー、好き。 ちょっと僕は思い出してデレデレしていたみたいだ。先輩馬の呆れた様ないななきでハッとすると顔を引き締めた。するとウィルは僕の首を叩いて言った。 「フォル、今日も頼むぞ。今日は今までで一番気が抜けないが、お前と一緒なら大丈夫な気がするよ。」 僕はもちろん高らかないななきで答えたともさ。僕、頑張るね!ウィル! 僕とウィルは駆けていた。周囲を敵に囲まれていたけれど、味方は後方に姿を見せている。目の前で騎士団長が敵将と討ちあっている。団長に他の敵を近づけさせない様に僕たちは踏ん張っていた。 ウィルの鋭い槍さばきに一人、また討ち倒れた。僕は気を緩めずに、周囲を見渡した。僕は何としてでも王都に戻るんだ。人間に戻る前に!僕の願いはそれだけだった。
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