深追いの顛末は

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深追いの顛末は

僕とウィルが敵と戦っている間に、騎士団長が敵将を見事に倒した。味方の後続が鬨の声を上げながら僕らの元へと合流した頃には、敵陣は散り散りになりつつあった。 「一気に攻勢をかけるぞ!続け!」 騎士団長の指揮で、僕たちは逃げる敵を追った。ウィルと僕は隊を離脱する二騎を追いかけた。後ろから味方の助っ人も一騎追って来ているようだ。 僕は持てる力を振り絞って駆けた。敵兵の左後方に迫り、ウィルが長槍を振り払った。ドゥっと馬から敵騎士が放り出されて、後方へと転がっていった。もう一騎、敵が更に右方へと必死の形相で駆け出している。 僕たちは先ほどの様に、相手との距離をじわじわと詰めて追いかけた。ウィルの槍が風を斬ったその時、またもや騎士が空中に放り出された。 僕らがやり遂げて足を緩めたその時、後方から来ていた味方の騎士が僕らの側についた。そしてその騎士は僕らに長槍を振りかざした。それからは僕にはまるでスローモーションの様に感じた。 ウィルに伸びた槍の動きを見た僕は、一気に相手へ体当たりを食らわして反動で騎士は左方へと吹っ飛ばされた。味方に思えていたけれど、今となってはそれはどうでも良かった。 ウィルがしがみつく感触が、僕を焦らせた。僕たちは深追いしてしまった様だった。手綱からの指示の無いことを感じながら、僕は味方の陣へと方向を変えて、駆けた。 時々現れる敵兵を蹴散らしながら、僕は駆け続けた。馬上のウィルを味方に送り届けるまでは、脚を切り付けられようが止まる事は出来なかった。 僕が止まって仕舞えば、ウィルは敵兵の餌食になるばかりだ。だめだ。それだけは。僕は夢中で駆けた。すると目線の先に味方の旗が翻っていた。 味方の陣に合流すると、騎士長が僕から、負傷して呻くウィルを引き取って相乗りで砦へと向かった。僕は後をついて駆けていた。視界の端に、先ほどと同じ味方に似ているけれど、違う騎士が陣に近寄って来るのが見えた。 僕は踵を返して、その騎士の側に近寄ると進路妨害に勤しんだ。気がつけば味方は砦近くに戻って、僕はポツンと味方もどきの敵騎士たちに囲まれてしまっていた。 僕はドキドキしながら、隙を見て包囲から逃れようと頑張ったけれど、手綱を取られてしまった。ああ、やばいって!僕はウィルがちゃんと無事かどうか確認してないのに!敵に捕まってしまった!
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