指先に触れるのは

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指先に触れるのは

僕の手を握っているのは、ウィルかもしれない。柔らかなクセのある金髪が僕のベッドに突っ伏している。僕はぼんやりとしながらも、もう一度ウィルの髪に触れたくてそっと空いてる手を伸ばした。 指に感じるウィルのやらかな癖毛は、まだ明るい月明かりで反射して綺麗だった。僕はこれが現実なら良いなと思いながら、もっと指先を伸ばして、ウィルの頭を撫でた。 僕はフォルとしてウィルに会っていたけれど、ウィルは僕には会っていないと思ってる。何だかそれが可哀想な気がして、寂しがっていただろうウィルの頭を撫で続けた。 ふと僕の指先がウィルの硬く節張った手に絡め取られて、僕はハッとして動きを止めた。寝ぼけているのか、ウィルは僕の指を優しく握ってつぶやいた。 「…ハル、無事で良かった。」 僕は身体を起こすと、ウィルに覆いかぶさって言った。 「ウィル?起きたの?…僕、助かったんだね?」 ウィルはゆっくりと起き上がって、僕を抱き寄せると、温かな胸にぎゅっと抱きしめて言った。 「…ハル。あの時、私は一瞬でもハルを、あいつに渡す気はなかったんだ。私の命を賭けてもね。」 僕はウィルの腕の中で戻ってこれたんだと安心して、そうしたら不意に自分が人間に戻ったばかりで、匂いだとか、汗だとか、馬の匂いだとか?が急に気になった。 僕はそっとウィルを押し退けて言った。 「…あの、ね、僕臭いかもだから…。」 するとウィルはクスッと笑って言った。 「相変わらず、妙に綺麗好きだね、ハルは。ふふ、私はハルがどんなに臭くても抱きしめていたいけどね。でも、ハルが気にしないで私にぴったりくっついてくれるなら、シャワー浴びておいで?」 そう言って、ウィルは僕を熱い眼差しで見つめた。ウィルのゾクゾクする様な眼差しは僕を直ぐに熱くさせた。吐く息も熱い気がする。そんな僕を見てウィルは舌打ちすると、僕を引っ張り起こして浴室へ連れて行った。 「さぁ、私がハルを押し倒さないうちに、綺麗にしておいで。ここで待ってるから。それと、なぜハルが敵陣に捕まっていたのかは、…私たちの気がすんでからじっくりと聞くから。」 そう言って、ウィルは部屋に戻って行った。僕は既に興奮して持ち上がってきている自分の昂りを意識しながら、念入りに身体を洗って準備した。ああ、僕も全然足りてない。 禁欲も今日で終了かなと、地上に近づいた満月を見ながら、甘い時間が始まる期待に唇に指を這わせた。
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