久しぶりの王都

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久しぶりの王都

王都の民衆たちの歓声に沸き立つ中、僕たちは凱旋行進で王都に戻った。僕は騎士でも兵士でも無いけれど、助っ人的事務方は砦にそこそこ派遣されていたみたいだ。 僕は派遣部隊の事務方リーダーと共に馬車に乗って、民衆の凱旋に喜ぶ様子を窓から見ていた。僕たちに気づいた路肩の人達が笑顔で手を振ってくれるので、僕も調子に乗って手を振り返した。 確かに僕も、馬のフォルとして活躍したのは間違いないんだ。はは。僕がそんな感じで興味津々な様子を見ていたリーダーが、僕に尋ねた。 「…ハルマは凱旋自体初めてなのか?その様子じゃ経験が無さそうだ。」 僕は窓から手を振りながら言った。 「ええ。僕は戦自体、経験がないんです。昔は大きな戦があった様ですけど、ここ60年ほどは平和そのものでした。だから、勝つとか負けるとか、まして凱旋行進自体、僕には初めての経験です。」 僕はそこまで喋ってから、ふとリーダーが黙りこくっているのに気がついた。僕がリーダーに顔を向けると、少し戸惑った表情で僕を見つめて言った。 「…ハルマの出身は何処なんだ?この国や、近辺でそんなに長い間戦の無い国なんて、ちょっと思い当たらないが。」 僕はリーダーの言葉にハッと我に返った。僕は民衆に手を振ることに気が散って、うっかり要らぬことまで話してしまったみたいだ。 僕は、顔を引き攣らせながら言った。 「…僕って、ちょっと皆さんと違う風貌でしょ?凄く小さな国なので、きっと皆気がつかなくて戦も仕掛けられなかったのかもしれませんね。」 僕のとっても苦しい言い逃れが、聡いリーダーに通じたのかは疑問だけど、リーダーは考え込みながらも僕にそれ以上の質問はしてこなかった。 ああ、ヤバいな。僕は自分でもどんどんボロが出て来ていることに気づいていた。でも、リーダーは僕を怪しんでいる素振りは全く見せなかったので、僕は直ぐに安心してまた凱旋行進を楽しみ始めた。 今から考えると、僕はやっぱり平和ボケしていたんだってよく分かるんだ。戦が当たり前にある世界の人間が、違和感を感じる相手に対してどんな反応をするのか、よくよく考えれば分かりそうなものだ。 それを思い知ったのは、僕がいつもの様に日常に戻って資金部で活躍していたその午後に、リーダーの部屋に呼び出された時だった。 いつもと違う顰めた表情のリーダーと、見るからに目つきの鋭い、見たことのない黒騎士が二人、僕を待ち兼ねていた。強面の黒騎士が前に進み出て言った。 「ハルマ シミズ。お前を密偵の疑いで取り調べることになった。これから王宮へ連行する。抵抗するよりは大人しくついてくる方が利口だぞ。」
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