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「ねぇ、明里と心って付き合ってるの?」
「え?ただの幼馴染だけど」
放課後。恒例のファミレス。私と中学からの友達、由佳の集いの場所。
私達はほぼ毎日高校の帰りにこのファミレスに寄り道する。
毎日行っていると話すこともなくなってくるが、今日は由佳が先に口を開いた。
「あんなに仲いいのに?ただの幼馴染なの?」
「うん。そうだけど」
「付き合わないの?」
「うーん。タイミングないんだよね。なんかもう小さい頃からの付き合いだし」
「よし、じゃあ明日告白しよっ!」
「え?なんでそうなるの?」
心とは赤ちゃんのときから兄妹のように一緒に育ってきた。家が隣、親も仲良し。幼馴染になる条件としては揃いすぎるほどに揃っている。
「ふっふっふ〜。明里。明日の授業はなーんだ?」
「え?明日の授業?えーっと。火曜日だからー……。数学、英語……。なんだっけ?」
「もー、そんなのはどうでもいいの!家庭科だよ。家庭科」
「家庭科?あ、調理実習って明日だっけ?」
「そうだよ!家庭科の先生がイベント好きでもうすぐバレンタインだからチョコとかスイーツ作っていいよって言ってくれたじゃん!」
「あー、そんなこと言ってたな」
「だーかーらー!明日チョコ作って、告白って感じで〜」
「そういう由佳は好きな人いるの?渡す相手とか」
なぜかテンションの高い由佳に私が聞くと顔を赤らめて照れ始めた。
「わ、私は……。私のことはいいの!とにかく明日っ!なんていうか決めるんだよ?」
「えー、由佳は教えてくれないの?」
「さ、もう帰ろっ!今日は早く寝て、明日に備えるの」
気づけば18時を回っていた。はぁ……。告白なんて考えてもいなかった。
でも、ずっとこのままっていうのもな……。
もう高校生だし。
ノリで下駄箱に入れてしまった。
『放課後1Bの教室で待ってて』
私の名前は書いてないけど、きっと筆跡でバレている。
私はC組、心はB組。私の教室に来てもらうより、私が行ったほうがいいよね。こういうのは。
なんだかそわそわする。早く放課後になってほしいようなほしくないような……。
キーンコーンカーンコーン
放課後を告げるチャイムが鳴る。
みんなは次々と部活に行ったり帰ったり。
みんながいなくなってからのほうがいいよね……。
遠目で由佳に応援の合図を送られて、由佳は先に帰った。
あー、もどかしい。
もうそろそろいいよね?
私は自分の教室を出た。
「好き」
え?心の声が聞こえた。廊下でドア越しだけど、絶対に心の声。
ドアの窓から見える、女の子と心の姿。
あぁ……。心はこの子が好きなんだ。
思考回路がフリーズする。私はその場から逃げ出した。
私、バカみたい。
私は走った。気がつけば学校の外まで走っていた。
もう嫌。自分が嫌。
「ちょっと」
学校の外、横断歩道の前まで走ったところで肩をつかまれた。
「え?!」
心……?!
「ハァハァ。やっと追いついた。お前走るの速すぎ」
「心……なんで?」
「なんでって、こんなもんあったら追いかけるだろう?」
心が見せてきたのは私の作ったチョコレート。
私いつの間にか落としてたのか。
袋に心へって書いてあるからバレちゃった。
「ごめんね?好きな人いるのに」
やばい、泣きそう。私は急いで背を向けた。
「は?」
「さっきの告白、聞いちゃったんだごめん。じゃあそういうことで」
私はまた泣きながら走り出した。もうこれ以上、私に構わないで。
「待って!!!」
心の叫び声に、私は思わず立ち止まってしまった。何してんだろう、私。
「待って」
今度は手をつかんできた。
私は黙って立ちすくんでいた。
「ちょっと、よく、状況が整理できないんだけど。俺、告白なんて、してないし、されてない」 心は息を切らしながら言った。
え?!してない?嘘だ。
私は思わず振り向いた。
泣き顔だったかもしれない。涙でぐしゃぐしゃの顔を見て、彼は引いただろうか。
「だって、好きって聞こえた」
「好き?」
心は少し考えた後、急に顔を赤らめてうつむいた。
「それには訳があるんだ」
「訳?」
「うん。放課後教室で待ってるように手紙もらっててさ……。この手紙はお前、だよな?」
「うん……」
「そうだよな。だから待ってたんだよ。手紙の通りに。そしたら、クラスの子が……」
「あれ〜?心くん珍しい!部活行かないの?って何ー?その手紙」
「え?!あ……」
「もしかして告白?」
「まだ決まったわけじゃない」
「誰からもらったの?」
「名前はわかんねえ。まぁ検討はつくけど」
「もしかして隣のクラスの明里ちゃんって子?」
「なんでわかんだよ」
「んー?だって仲いいじゃん」
「まぁな」
「で、心くんは、その子好きなの?」
「う、うん……。好き」
「……。といった感じだ。だから、今から告白すべき人は……」
私は何も言えなかった。頭が混乱して。でも、じゃあ……。
「明里、チョコレートありがとう。好きだよ」
私はもう言葉が出なかった。嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。
全部自分の勘違いって思うと少し恥ずかしいけど。
「泣いてねえで、答えは?」
「……。はい、私も、好き」
「なんか、付き合っても今まで通りって感じだね」
付き合う前から朝、一緒に登校してたからあまり変化はない。だから私は心にそうつぶやいてみた。
放課後は心が部活だからいつも通り由佳と帰ってるし。
背中を押してくれた由佳には本当に感謝してる。
「じゃあ、ちょっと変えてみる?」
心は照れながら言い、私の左手をとり、繋いできた。
「うん……!」
私も照れながら返事をして、ギュッと心の右手を握り返した。
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