2期生

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2期生

「それよっかさ。いい?動画見て」 と言いながら川平がキーをいじっている。 「いいけど、何?」 「2期生募集の告知動画ができたらしいんだ」 「おお」 と言ってみたものの、グループがこんな状態の時に2期生って。 「まあ。2期生募集は、東京ドームの前には決まってたからねえ。しかたないさあ」 時々、沖縄の言葉が出る川平、動画を見つけ出した。 「見よ」 「うん」 60秒間の動画。 厳かなピアノの調べ。 その中で、次々に映し出される私たちのダンスのカット。 そして、一人ひとりの正面を向いたカットバック。 あれ? 「ね。川平。これ、変だよね」 「もっかい見よう」 やっぱ。 「もっかい」 「うん」 4人、いない。 江藤茉奈がいないのはわかる。でも、あと3人。 藤高あい子は、ちゃんといた。 そりゃそうだ。私たちは藤高が戻るのを待ってる。運営だって、待っている。 東京ドームでロッカーに閉じ込められ、休養に入った華奢な三木かすみも細い手足でちゃんと躍動していた。いないのは。 「江藤茉奈、馬場まりあ、阿部心愛、山田瞳だね。臼井」 「江藤がいないのは仕方ないけど。この他の3人ってさ、やっぱ」 「間違いないよ」 「まさか。卒業?」 「でなきゃ、こんな」 おそらくこの3人は、東京ドームで三木かすみをロッカーに閉じ込めた犯人だ。やっぱりこの3人か。 そして、その後の運営の対応も大体予想がつく。 私は、怒りに打ち震えている責任者である宮武ソウタさんの姿を想像した。 「藤高がいない。三木も休養。江藤は卒業。それで、馬場と阿部と山田も卒業」 「だとしたら、私達って何人?川平」 「13人」 「なくなっちゃうよ。私達」 ぴかりと窓の外で稲光。 いち、に、さん、来る。 どがらごん!! 川平は何食わぬ顔で床に座ると、袋菓子の袋を開けた。 私もテーブルの前に座って、菓子に手を出した。 「ね。川平」 「何?」 「雷、怖いんじゃないの?」 「そんなこと言ったっけ。あ。言ったね。言った」 「もう」 「数学は?明日、小テスト」 「そんなの、私が気にするわけない」 「だよね」 「私は臼井と話したかったんだよ」 私も、誰かと話したかった。
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