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白球とバット
バッターボックスに入る緊張感が好きだ。
8人いる仲間も、ここには助けに来れない。前にも後ろにも敵しかいない。
自分ひとりだけで、立ち向かわなければいけない。そんな場所。
ヒリヒリと感じる緊張感に鼓動を速めながら、長谷川稔はベンチからの仲間の声援を受けバットを握った。
マウンドのピッチャーが首を横に振り、キャッチーからの球種のサインを拒否する。
稔は、ふーっと息を吐き集中力を高める。
ピッチャーがこくりと頷いた。…来る。
その場にいた全員が、一瞬の静寂を共有した
次の瞬間
キィーーンッ
青い空を白球が切り裂いていく。
みんなが空を見上げた。
「大きいぞー!!」
「回れ回れー!!」
稔は全速力で駆け抜けて、ファーストベースを蹴った。
まだ守備はボールには追いついていない。
そのままセカンドベースへと向かう。
まだイケる!
稔はセカンドベースを蹴る。
もう稔からはボールは見えない。
次はどうだ!?
サードベース止まりか?
仲間に目をやると
「回れ回れー!!」
と腕を回して稔にサインを送っている。
稔は仲間を信じてサードベースを駆け抜けた。
ホームベースまで後5m!
間に合うか!?
キャッチャーがボールを受け取る為に立ち上がる。
稔はキャッチャーを避けるようにホームベースへと滑り込んだ。
わぁー!!!
仲間が駆け寄り、稔の頭を力任せにバシバシ叩き、肩を組んだ。
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