2.

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適当な時間が過ぎたら席を立ち、そのまま帰ろうとしていた音無。鳳もそんなオーラを醸し出していたので、盛り上がることもなく。しかもゲイという性癖を知られた以上、何をどう話せばいいか、二人とも腹の探り合いをしていた。 どうでもいいような世間話と社会情勢の話を繰り返しては沈黙。気まずい空気は何度も流れる。  「拓也さん、次『ファンタスティック・レマン』お願い」 音無がバーテンダーの拓也にオーダーすると、かしこまりましたと上品な声で返事が来た。そのオーダーに、すっかりグラスが空になっていた鳳が音無を見た。 「この店、それ作れるんですか」 『ファンタスティック・レマン』はカクテルにしては珍しく日本酒を使う。バーによっては日本酒を置いていないところが多いため、バーテンダーに断られることがある。 鳳の様子から恐らく『ファンタスティック・レマン』が好きなんだろうな、と音無は気づき拓也に鳳にも出してあげて、とオーダーした。 ポーカーフェイスの鳳の顔が少しだけ和らぎ、音無はフフン、と訳の分からない優越感に浸っていた。 しばらくして二人の『ファンタスティック・レマン』がテーブルに置かれ、どちらからともなく、同時にカクテルグラスを差し出し、乾杯した。その後、二人はまた無言でそれを味わう。 普段はまだ酔わない音無だが、黙々と飲んでいたため酔いが回ってきたのか、鳳の横顔をまじまじと見て、整った顔をしているなと感じた。音無は男女ともに惹きつけるような上品な顔たちをしているが、鳳は違うタイプ。それでも同じように人を惹きつける。 茶色でパーマをかけているフワフワな音無の髪に対して、黒髪のオールバック。大きな目で二重の音無に対して切長の一重である鳳。 今まで絶対に隙を見せなかった鳳の顔。それを崩したことで、いつもより酔っていた音無は少し調子に乗ってしまった。 カクテルグラスを持つ鳳の手を、上から自分の手で包んだ音無。驚いたのは鳳だ。 「なあ、お前どっち?」 音無がそう聞くと、その質問の内容をすぐ理解し鳳は少し眉を顰める。 「……タチ」 それでも答えてしまう鳳。鳳もまた、思っている以上に酔いがまわっているようだ。その答えを聞き、音無が頷く。 「俺さ、ネコなんだよね。ちょうどいいことに」 コトンとカクテルグラスをテーブルに置く鳳。その目が音無を軽く睨んだ。 「何が、ちょうどいい?」 「あれ?インテリ君には分かんないかな?拓也さん、『シェリー』をお願い」 『シェリー』のカクテルの意味は『今夜はあなたに全てを捧げます』だ。知識の深い鳳が知らないことはないだろう、と音無が思っていると鳳は少しだけ口元を緩め、拓也にオーダーする。 「じゃあ私は『アクダクト』を」 『時の流れに身をまかせて』という意味の『アクダクト』。言い換えれば『身を委ねろ』ということだ。オーダーを聞いて、音無もまたニヤリと笑った。 ホテルの一室。シャワーをすることもなく、ベッドに入る前に激しくキスをする。当然、啄むようなキスではなく口内を蹂躙するような激しいキスだ。 一夜の相手、しかも嫌っているはずの相手にキスなんてと音無は思っていたが、いざ部屋に入り鳳と目があうと、まるで吸い込まれていくかのように唇を重ねていた。舌はまるでケンカしているかのように絡み合う。それでも背中がゾクリとするのは、鳳のキスが上手いせいだろうか。 「ん……ふぅ……」 もう息が出来ない、とばかりに鳳の身体を手で押してようやく唇が離れた。鋭い目が音無を射る。 「シャワー……」 鳳の言葉に音無は口を歪めた。 「ふん。もうアルコールまみれだし、今からどうせぐちゃぐちゃになるんだ。このままヤろうぜ」 鳳は眉を顰めたが、それを見て見ぬふりをする音無。鳳の正面の膨らみをスラックスの上から撫でて口元を緩め、バックルを外しながらスラックスをストン、と脱がす。 鳳は無言のまま、その様子を見ていた。 「半勃ちしてんじゃん。俺さ、舐めるの上手いからやってやるよ」 「舐めるのが好き、の間違いだろ」 「どうかなあ」 そのまま下着を持ち、下にずらすと鳳のそれがブルンと飛び出る。スラックスの上から触った感触で意外と大きいとは思っていたが、出してみると想像よりさらに大きく逞しく、浮き出た血管に音無は舌を舐めた。 スーツ姿の鳳から想像出来ないような雄々しさ。音無はそれを大切そうに両手で包むと、自分の口にそれを入れた。 頬張ると口内に収まりきれそうにないそれがドクドクと脈を打っているのが分かる。その血管を舌でなぞるように突く。 そして口を動かし、扱くと鳳は音無の頭を両手で掴む。ジュポジュポと室内に響く音。舌は付け根を舐めたり先端の割れ目を突いたり。口だけではなく片方の手で奥のものを揉みほぐしていた。 「……ふっ…く…」 溢れる声に音無は一瞬口をそれから離し、上目遣いに鳳に話しかける。 「気持ちいいんだろ?もっと声出せよ」
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