肩を組んで

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 天使が舞い降りた!  ならまだワクワクするだろう?  猫が降ってきた!  だって、キュンだのなんだの展開があると思う。  だが、昼休み、俺にビビっているクラスメイトたちを緊張から解放するために教室から出て木陰で本を読んでいた俺ののは“男”。  しかも、薄汚れた学ランを着て、汚いよもぎ色のリュックを胸の前で抱えた冴えないメガネの男。 「いってぇな」  乱れた前髪を掻き上げながら低く声を出すと、男はビクッと肩を揺らして横にズレて縮こまる。  身を屈めつつペコペコと頭を下げた男を見下してからこいつが落ちてきた木を見上げた。  特に風が強いわけでもなくそよそよと木の葉を揺らす様子は穏やかで、腰と肩に痛みさえ感じなければ最高に気持ちがいい。 「で?」  睨んでやると、男はビクッと跳ねてまたリュックを力一杯抱きかかえる。  目に涙を浮かべてビビりまくっているその姿は俺がこいつをイジメているように思えてきて、ガシガシと頭を掻いて木に凭れかかった。 「……そんなビビんなよ」  言いつつ、ビビるか……と心の中は思う。  目つきの悪い顔、低くてドスの聞いた声。  心配して手を差し出しただけなのに、俺は慌てて逃げられた経験しかない。 「あ……の……諏訪(すわ)さ……」 「あ?」  俺の名前を知ってる!?と反応しただけだが、男は跳ね上がって慌てて顔を隠した。  殴られるとでも思ったのか?  いい加減その反応にも嫌気がさしていた。
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