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「……で?木の上に逃げたはいいけど、降りられなかったのか?」
「あ、えっと……すいません」
また頭を下げる姿を見て、俺は尻をつけてあぐらをかいた。
「……それ」
「はい?」
「何か大事なもんでも入ってんのか?」
ずっと胸に押し付けられているリュックを指すと男はリュックの口を開けてガサガサと袋を取り出す。
「あ!お礼と言うか、お詫びと言うか……召し上がりますか?」
向けられた袋を覗いて俺は笑いながら潰れているメロンパンを出した。
「あぁっ!!すいませんっ!!他の……」
慌てる男を見て吹き出してしまう。
「全部潰れてんだろ?あんな必死に抱き締めてたんだから」
「でも……どれかマシなの……」
「これでいいって!サンキュ!お前も食うんだろ?」
待っていると男はそろりとペタンコの焼きそばパンを取り出した。
「ひっでぇな!それ!」
笑うと、男も小さく笑う。
「……なぁ、お前の名前は?」
「はぃ?」
メロンパンを咥える直前で聞くと、男も口を開けたままきょとんとした顔をこっちに向けた。
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