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「よしっ!五限サボったしな……教室戻るか?」
小さな背中を見上げて立ち上がると、その肩に腕を回す。
「え!?」
「友達……なんだろ?」
肩を組んだまま尋ねると、村上は嬉しそうに笑った。
「……次、何?」
「数学ですねぇ」
渡り廊下から校舎に入ると村上はまたリュックを前抱きにしてため息を吐く。
「面倒」
「本当に」
「お前、得意そうじゃん」
「まさか!いつも赤点ギリギリでヒヤヒヤしてますよ」
本当に嫌そうな顔でそれは事実だとわかった。
見た目はガリ勉なのに。
「はぁー?お前、俺より悪くねぇ?」
「あ、じゃあ、勉強も教えて下さい!」
「授業でも嫌なのにわざわざ勉強やるわけねぇだろ」
「昼寝なら喜んでするんですけどねぇ」
「お前、結構肝座ってるよな?」
教室の並ぶ廊下を村上の肩を組んで歩くと、目にした奴らは怯えたような、同情したような顔をしてサッと道をあける。
そして、笑っている村上を見て驚きを隠せないらしい。
「友達!素敵な響きですねぇ!」
にこにこする村上と教室に入ると金髪の田中と目が合ったのに慌てて逸らされた。だが、
「む、村上、諏訪さんと仲良かったのか?」
「うん!友達になったから!」
ためらいがちに尋ねてきたクラスメイトに村上が微笑んで「ね?」とこっちを見上げてくる。
頷くと様子を窺っていた周りの奴らもそろそろと近づいてきた。
「凄ぇわ。お前……」
いつもなら目が合わないように注意されているのに近くで感じる視線。
初めての“友達”はどうやら俺の孤独な世界を変えてくれたらしい。
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