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明日、今日よりずっと好きになれる
「おはようございます!」
月曜日、威勢のいい声とともにお店に顔を出すと、先に入っていた伽羅が目をまるくして顔を上げた。
「ちゅう子ちゃん……!」
「おはよう、伽羅ちゃん」
にっこり微笑んだ私に、布巾を握り締めたまま駆け寄ってきた。
「よかったあ、ちゅう子ちゃん、大丈夫?」
「うん、ご迷惑ならびに心配かけてゴメンね」
「それは別にいいんだけど……カラ元気とかじゃない? ホントに大丈夫?」
「あはは、大丈夫だよ」
話している途中で、厨房から店長が顔を覗かせた。
「ちゅう子ちゃん!」
「おはようございます、店長」
私は店長のほうへ向き直ると、姿勢を正し、深々と頭を下げた。
「先日は、ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
「はい」
視線は自分のお腹に向いているから、いま店長がどんな表情をしているか見えないけど、そのやわらかな声音から、微笑んでいるのがわかった。
"もういいよ"ではなく、ただひと言「はい」。私の謝罪を受け入れてくれた、そう思うと、嬉しさが溢れてきた。
でも店長は、もしかしたら私がもう出勤しないんじゃないかと懸念はしてたようだ。今日のシフトは、本来であれば私ひとりが9時から、伽羅は11時からの予定だ。万が一の時のために伽羅が駆り出されたんだ、悪いことした。
「ていうか、ちゅう子ちゃん……」
「ん?」
伽羅の声に顔を上げると、伽羅の目は相変わらずまんまるいままだ。
「なんか、雰囲気違うんだけど」
「えっ?」
「なんか、なんていうんだろ……キラキラしてるっていうか」
「あー……」
たぶんそれは、魔法にかけられたからだ。
天音さんの魔法に。
「表情が明るいっていうか、オーラが光ってるっていうか」
「さてはなにかいいことあったな?」
ニヤニヤしながら割り込んできた店長に、我ながら不気味なニヤニヤを返した。
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