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俺が見つけた場所
俺は高校生になった。土日はカフェでバイトをしていた。卒業後今の家をでなえればいけないが、金も順調に貯まっている。
カフェのバイトはいごごちがよかった。レトロなカフェで店主は高齢だった。
いい音楽が流れ珈琲のいい香りが店内を包む。俺は客がいない時は勉強をしていいと言ってくれる店主を祖父のように感じていた。俺が家族を無くして1番欲しかったものがここにはある。安心と暖かい心だった。俺はここで働き出してから、あいつらから盗品を盗んで売るのはやめていた。
ある日、自分と同じくらいの歳の女が来店してきた。女は奥の窓側の席に座った。俺は勉強をやめて接客をする。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「オリジナル珈琲とサンドイッチ」
注文時に顔をよく見ると、彼女は最近よく来店している女だった。
また珈琲のおかわりで声を掛けられる。
「ここいいお店ですね。嫌なことも癒される空間です。食事も珈琲も美味しいです。メニュー全部制覇しちゃいそう……」
彼女は可愛い顔して微笑んでいた。
俺は、小さい頃から誰も信じる事ができず人を信じない。信じられない。ただ甘い顔はできる。生きていくために自らが覚えた術のようなものだ。
俺の顔は母親に似ていてイケメンらしい。よく言われたがどうでもよかった。
だが大人になるにつれて顔の使いどころがわかってきていた。
「喜んでもらってよかったです。いつでも来て下さいね。待っています」
甘い顔で微笑みかけた。女は真っ赤な顔をして頷いていた。
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