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指輪
紫はある日、泣いて目を腫らした顔でカフェに入ってきた。俺が理由を聞くとゆっくり話しだした。
「家に泥棒が入って母親の形見の指輪を盗まれた。警察に言ったけど戻ってこないかもしれないって……」
紫は話終わる頃には我慢できずにまた泣いてしまった。
俺は胸が痛くなった。それは昔アイツらが盗んだものを自分がまた盗んで売っていたから。
直接手は出していないけど結局やっていることは同じだから。
わからないふりをしていただけで実際は同じことをしていると理解していた。
唯一仲良くなった紫が被害にあい、目の前で涙しているのをみると罪悪感にいたたまれなくなった。
「紫……」
名前を呼ぶしかできなかった。泣いている紫の頭をゆっくり撫で続けた。
俺は犯人があいつらじゃないかと思っていた。
盗まれた指輪の写真を見せてもらった。赤いルビーの石がついた特徴的な指輪だった。
家に帰ってから夜中に、アイツらの盗んだものを隠してある箱を隙をみて見た。紫の探していた指輪があった。
俺はすぐにそこから盗みだした。
アイツらにはバレていない。盗んで月日がたたないと足がつくからアイツらは売らない。これを紫に返す方法を考えなければならなかった。
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