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いじめにもいろいろなタイプがある。誰でもいいから標的にしたかった、といういじめ加害者もいないわけではないが、大抵は“自分にとってムカつく要素があった人間”を標的として選ぶことが多いはずだ。自分の好きな子に横恋慕したとか、自分の悪口を言っていた(と本人が思い込んだ)とか、もしくは授業や休み時間などに意見がぶつかってトラブルになったとか。
しかし、そういうきっかけが発生するのは、さすがにクラス替えからもう少し時間が経ってからの方が多いのではないか。たった半月足らずで、いじめに繋がるほどのトラブルに彼が巻き込まれていたようには見えない。前後に座っている男子と、時々喋っているのを見かけるくらいの大人しい少年なのだから(俺も何度かバスケやドッジで彼を誘ったが、誘いに乗ってきたのは一度だけであとは全部断られている)。
「気になる点その二。なんで、靴を先生の教卓横のゴミ箱に捨てたんだっつー。まるで見つけてくれと言わんばかりだ」
「それだよねえ」
うんうん、と海星も頷く。
「力輝が言う通りだと僕も思う。この教室、四階だよね。下駄箱超遠いよ?……下駄箱から靴持ってきて、教室で捨てる時点で違和感。手間がかかるし、誰かに見られる危険性も高い。下駄箱の近くにもゴミ箱あるんだから、そこに捨てればいいだけじゃんね」
「ああ。教室までわざわざ持ってきたのは、誰かに発見させるためだよな。いじめならありうることではある。ズタボロにした私物を見せつけて、相手に精神的ダメージを与えるってやり方だ」
「うん。それなら多少リスクがあってもやるってやつはいるんだろうけど。……それなら、教室の後ろにあるゴミ箱に捨てればいいんだよね。教卓脇のゴミ箱を選ぶ意味がわからない。実際本人より先に、先生が見つけちゃってるじゃん。意味がないでしょ」
「そゆこと」
下駄箱からの直線距離なら、階段の位置から鑑みても教室の後ろの下駄箱の方が近いではないか。では、何故教卓の横のゴミ箱を選んだ?先生がいないタイミングなら捨てることは可能だが、それではまるで“松本よりも先生に先に見つけさせようとした”みたいではないか。
実際、川口先生はカンカンに怒って教室で緊急会議まで開いてしまっている。
いじめというのは、大抵主犯が“先生にバレたくない”と思ってするものだ(先生をいじめのターゲットにしてしまっている場合などは除くが)。SNSがいじめの温床になりがちなのも、匿名というところが彼等彼女等の“バレずに嫌いな奴を叩きたい”という願望にマッチしてしまっているからだろう。
五年生ともなれば、本格的に受験勉強を始めているやつも少なくない。できれば大事になってしたくない、という心理が基本的には働くはずだ。いじめ被害者に“先生にチクったらぶっ殺すぞ”なんて言ったりするのもそのためである。
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