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「あっ、はい……で、でも……私も行動しないといけないんですか? し、失礼かもしれませんが……本当に、私に魔法をかけてくれましたか?」
不安そうな表情を浮かべる女の子に、ウィーラッチははっきりと言う。
「ああ、魔法ならしっかりとかかっているさ。ただ、それだけじゃ何も変わらなくてね……魔法を発動させるには、大切な手順があるんだよ。その方法は、私が今ちゃんと教えたからね? いいかい……いつか、理想の自分へと生まれ変わると信じて、必ず毎日、やるべき事を実践するんだよ?」
「あっ、はい……今日はどうも、ありがとうございました」
力無く腰を上げ、女の子はウィーラッチに背を向けると、とぼとぼと歩いていく。そんな彼女に向かい、ウィーラッチは最後に温かな言葉を吐き出す。
「あんたはもう、大丈夫さ……学校へも行けるし、素敵な女性にだってなれるよ」
太った女の子の次は、ひげを生やした弱々しい男の人が、ウィーラッチに悩みを相談していた。
人間が怖くて社会へ出られず、仕事もせずに何年も家に引きこもっていると語る男の人に、ウィーラッチは可愛らしいブレスレットを手渡す。
「これを、身に着けていなさい。社会で上手く生きられる魔法をかけておいたから、きっといつでもあんたを守ってくれるからね」
「ぼ、僕は本当に……これで、変われるんでしょうか? 社会復帰、出来ますか?」
消え入りそうな声でそう尋ねる男の人の前へ、ウィーラッチはカラフルな手作りクッキーが並んだ皿を、そっと置いた。
「さあ、焼き立ての魔法のクッキーさ。これにはね、人間に対する恐怖心が消える力があるんだよ。騙されたと思って、食べてみなさい。きっと、そのうち効果が感じられるはずさ」
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