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福音の子
鐘の音がしていた。
小さな木々を揺らし響く鐘の音。
隣にある教会からいつも響く鐘の音。
幼きジャンヌは、
それを道しるべに家に戻る。
─ジャンヌ─
─ジャンヌ─
─ジャンヌ─
─神の子ジャンヌ─
─聞こえますか─
─ジャンヌ─
─祖国フランスを救うために─
─立ちなさい─
─争いをなくすために─
─シャルル王子に会いなさい─
鐘の音はいつの間にか語り書けるように、
幼き幼女の耳の中で響いていた。
幼きジャンヌはどういう事かわからず、
姿なき声に答えていた。
「えっとね。 えっとね。 ジャンヌはね。
小さいからね。
それにね。 それにね。 小さいからね。
それでね。 弱いからね、 戦えません 」
─大丈夫─
─あなたは戦う必要はない─
─ただ立ちさえすればいい─
─ただ立ちさえすれば周りの皆が─
─あなたの剣となって代わりに戦ってくれる─
「立ってるだけでいいの?」
─はい─
「でもね。 でもね。 ジャンヌはね。
小さいからね。 そんな遠くには行かれません」
─ジャンヌ─
─あなたには愛と言う翼がある─
─その翼が折れない限り─
─あなたはどこまでも羽ばたいていける─
小さなジャンヌはその言葉を忘れないように、
何度も何度も呟いた。
愛は翼。愛は剣。愛は翼。愛は剣・・・
小さなジャンヌはこの時の事は覚えていないが、
その言葉だけは深く、
深層心理の中に刻まれる事となった。
─愛は翼─ ─愛は剣─
─2─
【 後にドン・レミ村の人は、
「ジャンヌは教会の鐘の音が好きで
何度も鳴らしてもらい、それを聞くと、
膝から崩れ落ちていた」と証言している】
ジャンヌ裁判より
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