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病みつきになるじゃないか
「え……ああ、ああぁ……」
律の中に熱いものが広がる。中出しされたと気づいた。
「ん……いや……」
男だから孕まないのはわかっているのに、怖くなって腰を引こうとした。が、橋田ががっちりとつかんでいる。
大きく息を吐きながら、橋田は腰を押しつけてくる。
橋田が放ったもののあまりの量に、律の下腹が震えた。
律はただ受け止めることしかできなかった。
「……これで、きみの初めては私のものだ……」
目を閉じて、律は頷いた。
橋田は律にキスをして、頭を撫でる。
律はふわふわした気分だった。
初めての経験はすぐに終わるけど、忘れられない。
酒の席で、大学時代の友人が言っていた。その通りだと思った。橋田が与えてくれた熱が体の奥にずっと残っている。
律は橋田の腕のなかでおとなしくしていた。体が重くて、動かせない。橋田に抱きしめられていると、心地よくて眠くなる。
そんな律の様子を、橋田は目を細めて見つめている。律の耳元に口を寄せる。
そして、律にしか聞こえないように囁いた。
「律。これからは、私がそばにいるから」
律は驚いて目を見開く。
そんなことを言われるとは思わなかったからだ。
うれしかった。こんなにも愛されていることに気づけたから。
「返事は急がなくていい」
「……え?」
橋田は苦笑いを浮かべた。
「抱かれて情が湧くことってあるんですよ。初めて気持ちよくなった興奮と恋心を勘違いして……」
「じゃあ、どうして橋田さんは僕を抱いたんですか?」
「こう言ったら、身も蓋もないんだが……」
律の鎖骨に橋田は唇を押し当てた。
「きみに会う度に、抱きたい、抱きたいと思った。私に抱かれたら、きみはどう感じるかずっと知りたかった。たった一度でもいいと思った、きみの肌に指を滑らすのは」
橋田の手が律の肌を撫でる。
愛された感触を思い出して、律は体を震わせた。橋田が息を吐いた。
「こんなに、いいとは思わなかった。病みつきになるじゃないか……どうしてくれるんだよ……」
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