エピローグ (長めです)

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けどこの気持ちは…。 「ええ。まぁこれからよろしくお願いします。」 俺はそのまま強引に由依を連れ、クリニックを出た。 「桐生。おまえ、あの歯医者が好きなのか?」 帰りの車の中で聞いてみた。 このまま由依を送ろうと思っていたところだ。 「え?」 キョトンとしている。 好きではないらしい。 よかったとほっとしている自分に苦笑する。 「恋愛の意味では好きじゃないです。わたしには他に好きな人ちゃんといますから。」 「は?」 衝撃の一言だった。 「ほう…。」 またライバル出現か。おもしろい。 「で?それは誰だ?」 「は?」 「お前の好きな男は誰だと聞いている。」 「そんなの、内緒に決まってるじゃないですか。絶対いいませんし。」 ふうん。 望むところだ。 絶対にその男をあきらめさせてやろうじゃないか。 ムクムクとわいてくる久々のこの気持ちは…。 「まぁいい。言ってろ。」 「は?」 「決めたんだ。」 「何をです?仕事は今日はもう終わりですよ。」 「仕事じゃないさ。ちょっと俺の個人的な事だ。」 「はあ…。」 このリスのようなかわいらしい風貌の中に隠し持つ有能な秘書としての才能とそしてこの気の強さ。 気に入った。
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