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「碧斗バイトあるっていってたでしょ?」
「ん。ん…まぁ。」
なんとなく不満そうに目をそらす。
「てか、わたし仕事だし。間に合わないとまずいから足と腕、どけてくれるかな?」
「まだ5時だし。あと1回くらいできるじゃん?」
あと1回だって…?
だいたい昨日の夜だって一回じゃなかったし…。
何度やったっけか…
それに結構よかっ…
いやいや。違うくて…
思わずぐらつきそうになる自分の心をなだめた。
「何言ってるの?女の支度時間なめないで。この服じゃ仕事行けないし、1回家も帰らなきゃだし。さぁ早く足…。」
せかすように言うと、ようやく碧斗は口をとがらせつつ、足と腕をどけてくれた。
わたしはそのまますぐにベッドを出て、バスルームへ向かう。
とりあえず家戻って服着替えないと…。
休日用のニットとスキニーパンツじゃ会社行けない。
で、今日は…。
そうだった…。
ぬるめのシャワーを浴びながら徐々に頭を仕事モードに変えていくと現実を思い出してしまった。
嫌だな…。
顔合わせたくない…。
けれど、月に一回の定例会議に出席することはもう決まっており、たかが一般社員の自分に出ないなどという選択肢はない。
ため息をつきつつ、バスルームから出ると、碧斗はその美しい裸体をさらし、ベッドに腰掛けてミネラルウォーターを飲んでいるところだった。
まったく、いちいちドキドキさせてくれるんだから…。
碧斗がシャワーを浴びている間に、わたしはすばやくメイクし、昨日と同じ服を着る。
碧斗がシャワーからでてきたときちょうど、カバンを腕にかけたところだった。
「碧斗。わたし先行くね。」
「え?ちょ…。」
水も滴るいい男…。
濡れた髪が相変わらず色気たっぷりで名残惜しくはあったけれど、のろのろしてるわけにはいかない。
「碧斗も早く行きなよ。バイト。」
「一花さんっ!また来てよね。」
腰にバスタオルをまいた状態でにっこり笑いながら手を振る碧斗を扉を出る時ちらりと見ながら、『ふぅーっ』とため息がでた。
何やってんだか…。
そのままホテル下のフロントで支払いを済ませ、タクシーを拾うといったんマンションへ帰ったわたしは大急ぎで仕事用の服を着て、洗濯をまわし、部屋を出た。
いくら落ち込んでたからって…碧斗とそういう関係になるなんて…わたし最低よね…。
しばらく『ソレイユ』行けないなぁ…。
橘一花26歳。
社会人4年目にして大失態でございます…。
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