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街にやって来る前に僕らが現れた森の中。
「あんたも街とか回りたいと思うけど、もう日が暮れるから、今日はもう帰るわよ! 街の探検はまた何れできるから!」
僕らは家へと帰る準備をしていた。たくさん買い物をして街を歩き回ったお陰で、もう日が暮れようとしていたのだ。
「家に帰ったらそろそろご飯の準備も出来てる頃だろうしね」
「うん、分かったよ」
桜の言葉に僕は頷き、桜が出してくれた半透明な扉をくぐる。扉を抜けると、その先は昨日見たあの大きな玄関の中だった。
「たっだいまー!」
桜がそう言って靴を脱ぎ、僕も同じように靴を脱ぐ。今思うと、かなり日本文化なんだな。海外では靴は脱がないものなのに。
僕がそんな些細な事に興味を示していると、廊下の向こうから白さんが現れた。相変わらず変なTシャツを着ている。
「おかえりなさい」
笑顔で快く迎えてくれる白さんに僕は自然と笑みが零れ、不思議と安心感に包まれた。
「部屋はもう完成してますよ。もし、家具の配置に違和感とかあれば、また言って下さったら私が直しますので」
「いやいやそんな! 大丈夫です! むしろ家具の配置なんて力仕事してくださってありがとうございます!」
「ふふ、大丈夫ですよ。家具は浮かせて配置しましたから」
「おお…」
薄々そうだろうとは思っていたけど、やはり神様って凄いんだな。僕は改めて白さんにお礼を言うと、桜に連れられて自分の部屋を見に行くことにした。
「うっわー…」
ドアを開けた瞬間、そこは普段僕が使っていた家とは大違いで、まるでスウィートルームにでも案内されたかのような錯覚に陥った。
「どう? ご感想は」
桜がウキウキとした様子で僕に感想を求め、僕は言葉にならないため息と感嘆の声を上げた。
「はぁ…すっごい…」
人は本当に凄いと思ったら、凄いという言葉しか出なくなるんだなと思った。突然語彙力が欠如するのだ。頭が回らない。
部屋は1LDKぐらいあって、ちゃんと寝室やトイレ、お風呂も仕切られていた。この部屋だけで住んでいける。一応家具もモノクロを基調として集めていたため、クロと白で落ち着いた雰囲気の部屋になっていた。
「ほんとに僕がこの部屋使って良いの!?」
思わず桜にそう聞いてしまうと、桜ふふんと鼻を鳴らして、「あったり前でしょ!」と、ふんぞり返った。
「誰のために今日一日買い物に付き合ったと思ってんのよ!」
「そ、そうだよね、本当にありがとう!」
これ以上ない気持ちと喜びで、桜に感謝の意を伝える。桜はクスクスと可笑しそうに笑っていた。
「アンタ見てると、反応が一々新鮮で飽きないわ〜」
「え、そう?」
「そうそう」
桜はひとしきり笑ったあと、ポンと僕の肩を叩いて、僕を夕食へと促した。
「さっ、そろそろご飯が出来てるはずよ! ご飯食べに行きましょ!」
「うん!」
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