初夜

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初夜

「これから、よろしくお願いします」   今までに3回会っていた、これから一緒に暮らす吉志広(きしひろ)くんと吉志幸司(きしこうじ)くんに挨拶をした。 「こちらこそ、よろしくね。何かわからないことがあったら言ってね」   広くんはニコニコしながら、ボクに言った。 「勇、慣れないこと多いと思うけど、仲良くやろうな。」 「はい……」   ボク早川勇(はやかわゆう)は、この間まで児童養護施設という施設にいた。1年前、お母さんが死んでしまったんだ。   お母さんはずっと病気がちで仕事がない日はずっと、寝てばかりで、最後は何だかボクのことがよくわかんなくなって、入院してそのまま帰ってこなかった。   お父さんのことは、よくわからない。広くんは、本当のお父さんじゃないんだって。でも、お母さんのことを知っているって言ってた。だから広くんは「今1人なら、僕のお家においで」って、言ってくれた。 「じゃあ、勇。この布団で寝てね。リュックは、この棚の上に置いておくからね。僕はもう少し仕事があるけど、隣の布団に寝るから、何かあったら起こしてね」 「はい。ありがとうございます。おやすみなさい」  〝勇、いい。いい子にしてないと誰も勇のことは好きになってくれないからね。ずっと、いい子でいるんだよ〟   お母さん、ボクいい子でいるよ……   目を開けると見たことない天井で、横を向くと男の人が寝ている。 広くん……あっ、そうか……広くんのお家に来たんだっけ。ホッとすると、お尻のまわりの違和感に気づいた。   ドクン……   不安に心臓が波打つ。   この感じ……まさか……   おそるおそる、下腹部の方へ手を伸ばしてみると、ズボンがグッショリ濡れていた。  ドクン……ドクン……  布団も触ってみると、やっぱりグッショリ濡れていた。   どうしよう、どうしよう……   目から涙が溢れる   どうしよう、どうしよう、どうしよう……   こういう時、どうしてたっけ……   どうしよう、どうしよう……   ボクはいい子じゃなきゃダメなのに……   ボロボロっと涙が溢れる。 「ひっ……んん……。ひっく……」   あ、お着替え……   思い出して、持ってきたリュックを探す。   あれ?あれ?どこだっけ……?   ガサガサガサ……   暗くてよくわからない……   その間にもボロボロ涙が流れて「ひっく...ひっく....」と嗚咽も漏れる。
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