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時計を見ると、もう午後9時を回っていて、足早に家路へ向かう。ここ1ヶ月程、激務が続いていた。勇がいるため、出来るだけ定時に上がれるように、日中は仕事を詰め込んで、休日出勤する事もあった。だけど、特にこの1週間は、残業することも多く、幸司にもだいぶ負担をかけた。
勇はもう寝たかな……
幸はテスト前なのに悪かったなぁ……
そんなことを考えていると、冷たい風が吹き込み、ブルっと体が震えた。
翌朝起きると、喉の違和感があり、唾を飲み込むと激痛が走る。体を起こすと、重く、気だるい。
まずい……やっちゃったかな……
ちらりと横を向くとまだ、勇が寝息を立てている。重たい身体を気力で動かし、勇を起こさないようにそっと部屋を出た。リビングでは、幸司がすでに起きて朝の用意をしていた。
「おはよ……ん?大丈夫?顔色悪いよ」
なかなか……するどい……
「ん?ん~」
「具合悪んだろ。父さんは、調子崩すとすぐ熱出すから!」そう言うと、体温計を押し付けられる。
ピピピッ……
36.8℃……寝起きでこの体温……ちょっと、いや、だいぶマズイか……
元々体温は低く、特に寝起きはいつも35℃ちょっとしかない。
「何度?」
「ん~、36℃……」
すかさず、幸司に体温計を奪われ、睨まれる。
「ったく、何で子どもっぽいウソつくんだよ!!」
「ス……スミマセン……」
「確か昨日で、ひと段落ついたんだよな。今日仕事休めないの?勇のこともオレがやるし」
「そうだったんだけどね……今日は朝、顔出さないとまずっくって。でも、午後から半休取って帰って来ることにするよ」
心配そうに見つめる幸司の肩を2回叩き、身支度を始める。
「勇、ゆーう」
布団をたたかれて、目が覚める。
「幸兄ちゃん……?」
カーテンと窓を少し開けている、幸兄ちゃんがいる。
「おはよ」
「おはよう……ゴザイマス」
あれ?幸兄ちゃん?いつもは広くんが起こしに来るのに……
隣の布団にも広くんの姿はない。
「父さんは、ちょっと風邪気味みたい。勇にうつさないようにって」
幸兄ちゃんの手が頭に乗り、撫でられる。
「ちょっと窓開けて、空気の入れ替えしてるから、早く着替えて降りておいで」
そう言うと、幸兄ちゃんは行ってしまった。
なんだろう……なんだかモヤモヤ……すごく寂しい……
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