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寒い朝の大失敗
日曜日は、平日とは違い少しゆっくりな朝。朝ごはんの準備をして、時計を見ると8時を過ぎている。休みの日の勇は、自分で起きてくることが多いが、今日は8時を過ぎても起きてくる気配がない。
どうしたかな……
様子を見に部屋に行き、勇に声をかけるが、何だか歯切れが悪い。布団の中でモゾモゾ動き、起きているようだが、布団から出てくる気配がない。
※※※
目を覚ますと、もう隣の布団には広くんの姿はなく、起きようと思った時に下半身に違和感を感じて、少しブルっと震える。
ドキン……この感覚知っている……
おそるおそる布団の中を覗いてみると、濡れたズボンと布団が目に飛び込んできた。
ドクドクドク……
やっちゃった……どうしよう……
一時期、わざとおねしょをしたことがあったけど、わざとじゃないのは、ここに来た日以来だった。誰かが階段を上がってくる音が聞こえる……ガバッとまた布団に潜り混むと同時に、ガチャとドアが開く。
「ゆう~朝だよ~」
「………う…ん」
※※※
「そろそろ起きて、朝ごはん食べよう」
カーテンを開けながら、勇に声をかけるとモゾモゾモゾと動く。
「どうした~。ゆ~う~」
やっぱり、モゾモゾさせるだけで布団からは出てこない。
「具合悪い?」
そう聞いても、布団から顔すら出そうとしない。
この感じはもしかして……
「ゆう?もしかして、おしっこ漏れちゃった?」
※※※
目が覚めた時からおしっこがしたかった。ズボンも布団もとうに冷え切っていて、体が冷えて余計におしっこがしたい。おねしょしちゃったことは、たぶん広くんは怒らない。でも……またわざとしたって思われたら、どうしよう……広くんと幸兄ちゃんと、わざしないと約束をしていた。
今日はわざとじゃない……でも……
そんなことが頭をグルグルして、早くトイレに行かなきゃいけないのに、布団から出ることができない。
「ゆう?もしかして、おしっこ漏れちゃった?」
広くんにそう聞かれてドキッとして、じょわっと冷たかった股間が一瞬温かくなる。
※※※
体を固めた勇を見て確信する。顔の辺りの布団を少しめくると、涙目の勇がいた。
「今朝はちょっと冷えたしね。さぁ、風邪ひいちゃうからお風呂に行こう」
布団をめくると小ぶりな世界地図と、必死に股間を押さえて縮こまっている勇の姿があり「まだ出そう?!」と咄嗟に声を上げていた。
※※※
ちょっとだけ、おしっこが出ちゃったけど、何とか食い止めた。広くんが顔を覗き込んで来て、目が合うと泣きそうになる。でも、それよりも今は、この漏れそうなおしっこだ。
おしっこ……おしっこ……おしっこ……待って待って……
さらにギューっと強く抑え、体を丸める。その時、布団がめくられ、一気に体が冷える。
じょわっ…しゃわわわわわ…
「あっ…」
抑えていた手をすり抜けて、おしっこが出てきてしまう。
※※※
「あっ」と声を出しかかと思うと、勇の押さえてる手の隙間から水が漏れ出てきて、さらに布団を濡らし地図を大きくしていく。もしかしたら、おねしょはちょっとだけで、だいぶ残っていたのかもしれない。
「あっ、あっ、どうしよう……うっうっう……だめ……出ないで……」
勇は苦しそうに、まだ必死に抗っていた。
「大丈夫。そこで全部出しちゃおう」
「うっ…うっ……うわーん」
プチパニックになっていた勇を安心させるために、声をかけたつもりが、逆効果になってしまった……
※※※
1度出始めたおしっこは、もう止まらなかった。おねしょもしちゃったのに……おもらしも……どうしよう、どうしよう……広くんが見てるのに……
ほんの数秒だったのかもしれないけど、とてつもなく長い時間に感じられた。あんなに冷たかった下半身が、今はじんわり温かい。広くんがボクを抱きかかえようとすると、急にものすごく恥ずかしくなって、どうしたらいいのかわからなくなって、手足をバタつかせて拒否してしまう。
「だめーこっちにこないでーうわーん」
こんなこと言いたいんじゃないのに……止められない。だけど広くんは、さらに力強く抱きしめてきて動くことができなくなる。少しずつ強張っていた力が抜けていくのがわかった。
※※※
勇を抱きかかえようとすると激しく抵抗し、こんなに激しく感情を出す勇を見るのは初めてだ。それでも力では、まだまだ勇に負ける訳がなく、固定させるように抱きしめる。
「うーうっうっ……」
観念したのか、勇の力が抜けていく。
「大丈夫だからな。大丈夫、大丈夫。ちょっとビックリしちゃったな」
「うっうっうっ……うえーん」
僕にしがみついて泣き続ける勇を優しく抱きしめて、落ち着くまで背中をさすり続けた。
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