兄弟だから…

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兄弟だから…

 今朝、勇が失敗したようで、部屋を覗くとグズグズの勇と父さんがいた。 「父さん、ここはオレが片付けておくから。お風呂……今朝冷えてたから一応、お湯も張ってるから」 「おぉ。悪いな(こう)、助かるよ」 「さあ、勇。行こう」  勇を抱っこして、父さんは部屋を出て行く。一時期、勇のおねしょが続いた時から、おねしょシーツを敷いているので、布団にまでは漏れていなかった。このおねしょシーツは、オレが使っていたものだ。 「まだ、取っておいていたのかよ……」  ボソッと呟き、シーツを丸めて抱える。  一緒にお風呂に入って、上がってきても勇の機嫌は直らず、ソファーの隅っこで丸くなっている。今日はホットミルクも手付かずだ。 「勇、一緒に朝ごはん食べよう」  フルフルフルと勇が首を振る。 「じゃあ、飲み物だけでも飲もう」  フルフルフル…… 「父さん、じゃあオレそろそろ行くわ」 「あぁ。バイトだっけ?気をつけてな。あと、さっきはありがとな」 「ん…。別に…」 「じゃあ、行ってきます」 「行ってらっしゃい」  幸司をリビングで見送り、相変わらずの勇の隣に座る。抱き寄せて膝にのせると、若干バタバタと抵抗したが、すぐに観念して身を委ねてくる。 「僕はさ、勇がわざとしちゃった訳じゃないって、ちゃんとわかってるよ。昨日寝る前にしっかり、トイレに行ってたのも知ってる。それでも、寒かったりしたら、漏れちゃうこともあるんだよ」 「でも……おねしょもしちゃって……そのあとも……やっぱりボクはいい子じゃない」  久しぶりに勇の口から いい子 の文言が出てくる。しばらく聞いてなかったから、落ち着いたかと思っていたけど、いい子の呪縛は強烈なようだ。それだけ、連続2回の失敗はショックだったのだろう。 「どんな勇でも大好きなんだよ。これからもずーっと大好きなままだよ。僕も幸もずっとずっと一緒にいるから、不安になることはなにもないよ」 「うっうっ…」  勇の嗚咽がおさまるまで、優しく抱きしめ続けた。 「いっぱい泣いたし、お風呂にも入ったから、何か飲もうね。じゃないと干からびちゃうよ」 「それは、冷えちゃったから、また温めてくるよ」  勇がカップに伸ばしかけた手を見て声をかける。 「ごめんなさい」 「すぐに温められるからね。大丈夫」  勇の頭をポンポンと軽く撫でて、カップを持ってキッチンへ行く。  一緒にホットミルクを飲み、やっと勇も落ち着いてくる。 「おいしい」 「ははっ……よかった。勇はさ、漏らしちゃうこと、すごく気にしてるけど、実はね、幸も勇くらいの時は、おねしょも、おもらしもいっぱいあったんだよ」 「えっ?」 「今は何でも出来る、頼もしいお兄ちゃんで、かっこいいよな」 「うん!幸兄ちゃんはすごくかっこいい」 「そうだよね。だから勇もなーんにも心配しなくていいんだよ。幸みたいなかっこいい男になれるから」  やっと少し笑顔が見られた勇の頭を軽く撫でた。
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