ホカホカ熱曜日

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 気がつくと、いつもの部屋の布団で寝ていた。断片的に、葉山先生が保健室に連れて行ってくれたことや、幸兄ちゃんが迎えに来てくれたこと、病院で鼻の中に棒を入れられて、すごく痛かったことを思い出した。  部屋は、薄暗くて誰もいなくて、いつもの部屋なのにすごく心細い。  ドキン……と心臓が鳴る。  その時ドアが開いて幸兄ちゃんが入ってきた。 「おっ、勇。目が覚めたか。具合はどうだ?」 「……うっ……幸兄ちゃん」  幸兄ちゃんの顔を見ると、なんだかわからないけど、涙が出てくる。 「うっ……うっ……どこ行ってたの」  ボクのおでこに、手を当てる幸兄ちゃんにしがみつく。 「洗濯してたよ。寂しかったのか。ごめんな」 「どこにも行かないでー」  いつもは1人でも寝れるけど、今日は1人は嫌だった。 「わかった。わかった。勇のそばにいるよ。安心して。さあ、また熱を計ってみよう」  幸兄ちゃんの声が入らないくらい、抱きつく。 「これじゃ、熱計れないよ。測り終わったら、たくさん抱っこしてあげるからな」  幸兄ちゃんは、テキパキとボクの脇の下に、体温計を挟める。 「38.8度……さっきよりも上がってるな。寒くないか?あ、ポカリも飲んでおこう」  さっき、約束した通り、抱っこしながらポカリを飲ませてくれる。 「そういえば、しばらくトイレに行ってないけど、おしっこ大丈夫か?」  そう言われると、急に思い出したかのように、おしっこがしたくなる。気づくと、じゅわっとパンツを濡らし、慌てて押さえる。 「ありゃ、大当たりか。まだ、我慢できるよな。急いでトイレ行こう」  幸兄ちゃんは、抱っこしたまま立ち上がり、トイレに向かう。 「頑張れ。ガマン、ガマン」 「う……ん……」  じょわわわわわ…  便座に座って、勢いよくおしっこを出す。パンツはけっこう濡れちゃったけど、一応漏らさずにトイレに来れたことに安堵する。  幸兄ちゃんの目の前でおしっこするのは、ちょっと恥ずかしいけど、今は頭がボーっとしているのと、溜まっていたおしっこが出せてホッとしていて、何も考えられない。 「全部出たか?汗もかいていたし、体も拭いて着替えもしよう」  幸兄ちゃんには、パンツが濡れてしまっていたことは、バレていたようだ。  着替えて、ソファに横になっていると、いつもより、うんと早く広くんも帰ってきた。 「勇。大丈夫か」  ボクの額に置いた広くんの手は、冷たくて心地良かった。 「父さん、おかえり。さっき熱計ったら、38.8度でまだ上がってるみたい」  幸兄ちゃんは、ボクの部屋から布団を運んできて、キッチンが見える位置に敷き始める。 「1人だと心細い見たいだから。今はさみしんぼで、甘えんぼの勇だもんな」  そう言ってニコニコしながら、ボクの頭を撫でる。リビングに敷かれた布団に横になると、部屋にいる広くんも幸兄ちゃんも良く見えて、安心して眠ることができた。
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