憂鬱な季節

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「今日は幸兄ちゃんいないの?」  金曜日の夜、食卓を囲んでいるのは、ボクと広くんだけだ。いつもいる人がいないと、なんだかとっても寂しい。 「うん。幸也くんの家でお勉強するんだって。3日間泊まるって言ってたから、帰ってくるのは月曜日だね。寂しい?」 「……うん」 「ふふっ。じゃあ、2人でも寂しくないように、楽しんじゃおうか」  そう言って、ご飯の後は一緒にお風呂に入って、一緒にゲームをして遊んだ。幸兄ちゃんがいないのは、寂しいけど、ちょっとだけ広くんを独り占めしてる感じがして嬉しい。今日は、いつもより少し夜更かしをして、広くんと寝室に入った。 「勇、今日は久しぶりに一緒に寝ようか」 「え……」  ボクは大きく首を振る。だって、ここ1週間ずっと布団を濡らしている。一緒に寝たら、広くんの布団も濡らしてしまう。広くんは、ボクの思いを全て察したように優しく笑って、頭を撫でる。 「大丈夫だよ。2人で寝たら、あったかくて失敗しないかもしれないよ」 「でも……」  広くんと一緒に寝たかったけど、失敗するのが怖かった。 「じゃあ、勇の布団で一緒に寝ようか。それならいいでしょ」  広くんは枕だけを持ってきて、先に布団に入ったけど、ボクの足は動かない。 「つかまえたっ。そんなこわい顔をしてる子には、くすぐりの刑だ」と、固まっていたボクを抱っこして、お腹をくすぐってくる。 「いやはははは……ひひひひっ……やめてー……ひゃははっ」  そのまま、布団の上に降ろされて一緒に布団に入り、ぎゅーっとされる。広くんと一緒に寝るのは、本当に久しぶりで、少しドキドキしたけど、あったかくてすごく落ち着いた。そして、そのままスーッと眠りに落ちていく。
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