お父さん

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 学校が休みの日は、図書館に行ったり、公園で友達と遊んだりしている。今日も、公園に行くと淳くんと花音ちゃんがいて、ボクも遊びに入れてもらった。3人で遊んでいると聞き覚えのある声がした。 「オレも入れてー」  同じクラスの(だい)くんだ。3人でちょっと顔を見合わせてしまう。大くんは少し乱暴で、自分の思い通りにならないと怒って、途中でいなくなちゃうなど、ちょっと苦手だった。 「大くん、途中で急にいなくなちゃうでしょ。それに、オニとかになったら怒るし……」花音ちゃんが代表するように言う。 「いいじゃん。急に嫌になるんだもん。でも今日はやるから!」 「えー。いっつもそう言ってるし……それに、今日は家族で遊園地に行くって何回も昨日言ってたじゃん」淳くんも不満声を上げる。 「うるさいな!!父ちゃんは忙しいから、また今度になったの!お前たちの父ちゃんとは違うの!あ、でも勇はそんな父ちゃんもいないか」とボクの顔を見て笑う。 「えっ……」  何で大くんが知ってるのかなと不思議に思う。 「この間、学校で言ってたじゃん。知らないおじさんと住んでるんだろ」  ドクン……嫌な気持ちが押し寄せてきて、泣きそうになる。 「知らないおじさんじゃないよね。広くんだっけ?」花音ちゃんがフォローしてくれたけど、大くんの話も止まらない。 「でも、父ちゃんでも、新しい父ちゃんでもないって言ってたじゃん。たしか、母ちゃんもいないんだろ。かわいそうなやつ!」 「そんなこと言ったら、勇がかわいそうだよ。やめなよ。大!」  淳くんも加勢してくれてるけど……  でも……ボクはかわいそうなのかな……  なんだか、すごくモヤモヤして、みんなの声も聞こえずらい。  お父さんもお母さんもいないけど、広くんと幸兄ちゃんと暮らすようになって、毎日楽しい時間だったのに……  ボクが、かわいそうだから、広くんも幸兄ちゃんも一緒にいてくれるのかな。何故かわからないけど、すごく悲しくなる。 「勇くん?」 「大が酷いこと言うから、泣いちゃったじゃん。大が泣かしたー」  あれ……ボクは今、泣いてるの……? 「オレは何も悪くないし、こんなことで泣くなんてバッカじゃないの!やっぱ、お前らと遊んでも面白くないし帰る!」  引っ掻き回すだけ、引っ掻き回して、大くんは逃げるように帰って行く。  ボクは、体が動かなくなって、うまく声も出せなくなる。花音ちゃんも淳くんも、話しかけてくれていたけど、何も答えられなかった。
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