勇と幸司

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勇と幸司

 PiPiPiPi…  目覚まし時計の音で眼が覚め、今日は大丈夫だった……とホッと胸をなで下ろす。  勇のおねしょに引っ張られて、最近オレも不安定だった。寝ながらチビってしまうことも、頻度が増えていて、ここ1週間で3回もやらかしていた。着替えてリビングに向かう時、少し開いていた勇と父さんの部屋に「おはよ」と声をかけると、今起きたばかりの勇と父さんがいた。勇も今日は失敗しなかったようだ。  3人で朝食を食べている時、父さんがオレたちに声をかける。 「この間話した通り、今日は出張で帰りは明日になるからね。何かあったら、すぐ連絡して。幸、よろしく頼むな」 「あぁ、心配するなって。なあ、勇。今日1日くらい2人でも大丈夫だもんな」 「あ……うん……」  勇は少し、寂しそうに返事をする。  今日は、夕方から天気が崩れてずっと雨が降っていた。晩飯を食べ終わる頃には、雷も鳴り始めた。  ゴロゴロゴロ!! 「ひっ……」  テレビを見ていた勇が、小さく声を上げて身体を硬くする。 「勇、カミナリ苦手か?」  すでに少し涙目の勇が、小刻みにうなづき、そんな勇の隣に座って、抱き寄せる。 「大丈夫だよ。すぐにおさまるから」  そう言っている間にもドゴーンと大きな音が鳴って、勇がしがみついてくる。最近、少しずつ甘えるようになった勇を微笑ましく思い、守ってあげたくなる。 「じゃあ、今日は一緒に寝ようか。2人で寝たら怖くないだろ」  勇は少し困った顔をして、うつむく。勇が何を言いたいのか察しがつき、声をかけた。 「昨日も大丈夫だったんだろ。今日も失敗しないよ」 「う……ん……」  つい勇には、言ってしまったけど、オレ自身も心配で、余計なことを言ってしまったかなと少し後悔した。でも勇が眠ったら、こっそり布団を移ったら大丈夫かな……そう思いなおして、しがみつく勇の頭をそっとなでる。  念の為、防水シーツを敷いてある勇の布団に一緒に入る。まだ、カミナリは続いていて、勇はしがみついたままだ。2人でくっついて寝るのはとても、温くて気持ちがいい。勇を寝かしつけるためだったけど、いつの間にかトクントクンと意識が遠くなる。
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