勇と幸司

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〝幸司こっちにおいで〟  〝母さん!!〟 母さんが力強く抱きしめてくれる。オレは、なぜか小さくなっていて、抱きしめられたお腹は、とても温かい。  〝母さん……〟  でも、気づくと母さんは、オレから離れていく。  〝母さん、どうしてオレを置いていっちゃうの……?〟  〝どうして……〟  〝オレの事キライだったの……?〟  あんなに温かかったのに、もう身体は冷えていた。  〝うっ……うっうっ……〟  〝幸、もう大丈夫だから。洗ったらすぐにキレイになるから、何も心配いらないよ〟  えっ……父さん……?  もうそこには、母さんはいなくて、ぐっしょり濡れた布団の上にオレがいる。  〝さあ、お風呂に行こう。このままじゃ風邪ひいちゃう〟  あぁ……昔、おねしょしちゃったときだ……濡れたパンツがお尻に張り付き、あの嫌な感触で気持ち悪い。 「はっ……」気づいたら、もう朝だった。隣には勇が寝ている。勇を寝かしたら、抜けようと思っていたけど、そのまま寝てしまったようだ。  ん?!えっ……  布団をよけると、お腹のあたりがぐっしょり濡れている。勇のズボンも周りも濡れていて、あー勇がやっちゃったのか……と合点がいく。  でも……それだけじゃなくて……  ドキン……ドキン……と嫌な感じに心臓がなる。そっと自分のズボンを見ると、ハッキリと濡れているのがわかる。お尻をズラしてみると、布団にも小さなシミがついている。  えっ……あっ……ウソ……  いつものちょっとチビっているよりは、ずっと量が多くて、もう明らかにおねしょだった。  ドッドッドッドッド……  やっちゃった……しかも……勇の布団で……サイアクだ…… 「ん……こう……兄ちゃん……」  ビクッとして、勇の方を見る。 「あっ……どうしよう……ご……ごめんなさい……ごめんなさい……」  勇は自分の失敗に気づいて、泣きそうな声で何度も謝ってくる。 「ごめんなさい……」 「大丈夫」  オレは、勇に自分の失敗が気づかれないか、気が気じゃない…… 「ごめんなさい……」 「うん。さ、シャワー行こうか」  早くこの場から立ち去りたくて、仕方がなかった。 「ごめ……」 「わかったから!!」  勇がビクッと身体を硬くして、我慢していた涙をボロボロこぼして、声を押し殺して泣き始める。 「うっうっ……ご……ごめんなさい……うっうっうっ……」 「あ……ごめん。勇……ちがう……怒ったわけじゃないから……ごめん……ごめん……」  オレは勇の頭を撫でて謝ることしかできない。  何やってるんだ……勇は何も悪くないのに……もう自分にイラついて自己嫌悪に陥る。  何とか自分を落ち着かせて、少し落ち着いてきた勇に気丈に声をかける。 「先にシャワー行けるか?ここを片付けてすぐ行くから。ボイラーのスイッチ押しておいて。一緒にシャワー入ろう」  まだいっぱい目に涙を浮かべた勇がコクっとうなづいて、部屋を出て行く。勇はオレも、漏らしていたことは気づいていなかったかもしれないけど、立ち上がってシーツを見てみると、明らかに2つの場所が濡れていて、2人で漏らしたという現実を突きつけてくる。シーツを丸めて、自分の股間を隠すように、風呂場に向かう。
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