台風の夜に⑴

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 広くんと初めて一緒にお風呂に入った。体と頭を洗って一緒に湯船に浸かる。 「勇は、頭も体も全部一人で洗えてえらいなー」  フルフルとボクは首を振る。  そんなこと、当たり前なんだ...... 「勇、そんな隅っこにいないで、もっとこっちにおいで」  湯船の端にいたボクを広くんは足の間に引き寄せる。 「勇は一人で何でもよくできて、すごくえらいよ。でも、たまには甘えてもいいんたよ。不安なときや怖いときは、こわいって、そばにいてって言ってもいいんだよ」  広くんの顔は見えないけど、背中越しに声が響いてくる。  フルフルフル......ボクは首を横に振ってると、クルッと体の向きを変えられて、広くんの顔が目の前にきた。 「僕や幸にも言えない?」  まっすぐに目を見つめられて、ボクはどうしたらいいのか、わからなくなって目をそらす。 「そんなに頼りないかなぁ......」 「ちがっ......」 「ん?」 「そ、そんなこと言うのはいい子じゃないから。いい子じゃないと、ダメだから」 「そうかなぁ。こわいって言っても甘えても、勇はいい子だよ。僕は勇に甘えてもらえると、すごく嬉しいな」 「えっ?甘えてもいい子......?広くんは嬉しいの?」 「そうだよ。だから、僕のためにいっぱい甘えて欲しいな」  また、広くんと目があってボクはコクって頷いたら、ニコニコ笑ってボクの頭をポンポンって叩いた。  布団に入って、お風呂で広くんと話したことを思い出していた。こわいって言っても、甘えてもいい子なんだって言っていた。外は風が強くなって、さっきよりも窓ガラスガタガタなってたけど、ボクは全く気にせず眠ることができた。  ガタガタガタ.......  凄い音がして目が覚めた。隣の布団にはまだ、広くんはいなくて、時計を見るともう少しで12時だ。  ガタガタガタ......  寝る前よりも、もっと風が強くてガタガタの音も大きい。  ドキドキドキドキ...... 「広くん、こわいよ」  ボソッと呟いてみたけど、広くんには届かない。  布団に潜って、目を瞑って、耳を塞いで寝ようと思ってもなかなか眠れない。  あぁ……おしっこもしたい……  ガタガタガタ.....  どうしよう......  どれくらい時間がたったのか、風は少し弱まりガタガタの音も小さくなった。今のうちにと思い、布団から出て立ち上がると一気に尿意が高まり、ジュッとパンツを湿らせた。すぐに前を押さえて足踏みをして、なんとかヤマを越える。  あぶない......早くトイレに行かなきゃ  廊下は真っ暗だったけど、すぐに電気をつけてホッとしてトイレに向かう。階段を降りながら、何度か立ち止まって、足をくねらせてやり過ごし、1階の玄関前までやってきた。ここまで来たらトイレまではあと少し。  その時、急な突風が玄関の戸を激しく叩いたかと思うとフッと一面真っ暗になった。
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