19人が本棚に入れています
本棚に追加
昨日のカミナリが嘘のように、今日はいい天気で帰るときは、広くん……いや、お父さんと一緒にお月様が出ているのを見た。でも、ボクは今朝の失敗といつもと違った幸兄ちゃんを思い出して、心は晴れていなかった。
「勇、ご飯できたからお皿出すの手伝って」
お父さんに呼ばれて、テレビを消してキッチンへと向かう。今日は生姜焼きで、いい匂いが充満している。お茶碗とお椀を3人分出していると、お父さんに声をかけられる。
「あ、今日は、幸の分はいらないよ。幸也くんのところに泊まってくるみたいだから」
「えっ……今日、幸兄ちゃん帰ってこないの?」
今朝のことを思い出して、ドキッとする。幸兄ちゃんは、まだ怒っているのかもしれない……
「うん。学校の課題がなかなか終わらなくて、幸也くんと一緒にお勉強するんだって……」
本当は、ボクに会いたくなくて、帰ってこないのかもしれない。
「ん?勇、どうした?」
お父さんは、お茶碗を持って固まっていたボクに近づいてきて、顔を覗き込む。お父さんと目が合うと、我慢していた涙が決壊したように流れてきた。
「うっ……うっ……お父……さん」
「どうした?幸がいなくて寂しくなった?」
「幸兄ちゃんは……うっうっ……ボクのこと……キライに……なちゃったのかな……うっうっ……だっ……だからっ……帰ってこないの……かな……」
今朝、初めて幸兄ちゃんが大きな声で、怒るのを聞いた。怒ってないって言っていたけど、あんな声を今まで聞いたことがなくて、ビックリしてちょっと怖かったんだ……
「んー?どうして、勇のことキライになるの?」
「だっ……だって……おねしょ……しちゃって……幸兄ちゃんの……パジャマ……濡れちゃって……だからっ……ごめんなさいって謝って……いっぱい謝って……幸兄ちゃん……大丈夫って……大きい声で……怒ってるみたいで……」
「うん……そっか。でも幸は、怒ったんじゃなくて、もう謝らなくていいよって言いたかったんじゃない?」
「でっ……でも……」
「幸も朝だから、ちょっと眠たくて大きい声、出しちゃったのかもしれないよ」
「うん……」
「それに今日帰ってこないのは、幸也くんとお勉強するためだからね……」
お父さんは、ボクをギューと抱きしめて、ボクの涙が止まるまで、ずっと背中をさすってくれていた。
最初のコメントを投稿しよう!