勇と幸司

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先にお風呂をいただき、幸也が入れ替わりにお風呂へと行く。リビングには、幸也の叔母さんである里子さんがいて、冷たいお茶を入れてくれた。今日は、里子さんの旦那さんの(さとし)さんは出張でいなかった。 「ありがとうございます」 「幸司くんもちょっと見ないうちに、大きくなったねー」  ここ2年くらいは幸也の家に、ちょこちょこ行ってたけど、仕事をしている里子さんとは、会うことはなかった。最後に会ったのは、小学生の頃だったろうか…… 小学生の頃は、お互いに泊まりに行きあっていたけど、中学生になってからは、クラスも3年間違い、オレは部活に入っていて、幸也は生徒会に入っていて、気づかないうちに疎遠になっていた。去年同じ高校で、同じクラスになると、また以前のような関係が復活できたのだ。 「最近また、幸司くんに仲良くしてもらって、私も嬉しいよ」 「あ、オレもです。中学の頃は、幸也と疎遠になっちゃって、ちょっと寂しかったんで」 「あの子は、幸司くんに迷惑かけてなきゃいいけど……」 「そんなことは、全然ないです。むしろ幸也にはいつも助けられてます」  里子さんと話している間に、幸也はお風呂から出てきていた。 「2人で何、話してたんだよ。ほら、幸司いこ」 「なによ、(ゆき)~。妬いちゃって~」 「あーもう、里姉うるさい」  幸也は、半分照れ隠しのように悪態をついて、部屋を出て行く。 「じゃあ、おやすみなさい」幸也に続いて、オレも部屋を出る。  幸也の部屋に行ってもまだ寝るには早く、ゲームをして過ごす。それぞれのゲームのキャラクターを戦わせる、大乱闘ゲームだ。ある程度やったところで、幸也が「ちょっとトイレ~」と部屋を出て行く。  幸也が部屋に戻ってくると、手にはお茶の入ったグラスを持っていて、1つ受け取る。オレはお茶を飲みながら、幸也に声をかけた。 「幸也……篠田先生覚えてる?小学校のときの学校医の……」 「あー、懐かしいな。篠田先生には、だいぶお世話になったなぁ……」  ズボンを濡らしてお世話になっていたこともあり、幸也はややバツの悪そうに笑う。 「篠田先生がどうかしたの?」 「少し前に、熱を出した勇を迎えに小学校に行ったんだけどさ、その時、篠田先生に会って……また、何かあったら連絡してって言われたんだ……」  5年ぶりに保健室で再会した日、篠田先生から名刺を貰って、そのように言われていた。だけど、なんとなく連絡しそびれて今に至ってる。 「篠田先生は、一応オレの主治医でもあったから……今の状態とか母さんのこととか話してみようかと思って……」  小学生の頃、体調を崩しやすくなって、お漏らしが続いた時に、篠田先生の大学病院を受診して、診てもらっていた。 「それで……幸也も一緒に来て欲しいんだけど……」 「でも、お母さんの話とかもするんだろ。僕はいない方がいいんじゃ……」 「いや……幸也には一緒に聞いて欲しい……」 「僕でいいの?」 「うん。幸也がいい」 「わかった」  篠田先生は尊敬できて、大好きな先生だったけど、あの時のしんどい気持ちも思い出されて、会うと何とも言えない気持ちになった。そんな状態で、冷静に話ができるとは思えなかったし、何よりも幸也には、全部わかっていてほしいという気持ちもあった。
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