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「うわぁー」
「勇か?大丈夫か?」
リビングのドアが開いて、幸兄ちゃんの声が聞こえるのと同時にパッとまた、明るくなった。
「よかった。すぐついて。......ゆう?」
電気がついて幸兄ちゃんの顔を見て、安心した。
あれ......足にお水......
ショショショショショヮヮ....
温かいお水が、ボクの足を伝って水溜りを作る。
「あーあー。やっちまったか......」
我に返って、ギュッと強く握ったけど、もう全部出してしまったあとだった。
「幸?どうした?勇もいるのか?」
「あ、父さん。勇、漏らしちゃってタオルとってくれる?」
「ありゃりゃ。こりゃ大変。タオル......タオル」
「勇、大丈夫か?急に停電になってビックリして出ちゃったんだよな。拭けば大丈夫だから。気にすんなよ」
幸兄ちゃんと広くんがボクの体を拭いたり、雑巾を取りに行ったり、バタバタ動いてるのをぼんやり見つめていた。ボクに何か言ってたみたいだけど、頭は真っ白で何も聞こえないし、考えられなかった。
「とりあえず、僕がここの片付けをしておくから、幸は勇をお風呂に連れて行ってくれる?」
ボクのお尻にグルッとタオルを巻いて、幸兄ちゃんは、ひょいと抱き上げてお風呂場へ向かった。
「勇、ゆーう!」
何度か声をかけられ、やっと幸兄ちゃんの声が聞こえた。
「大丈夫か?シャワーで温まろうな。パジャマ脱げるか?」
やっと、トイレに間に合わず、漏らしてしまったことが鮮明に思い出され、涙が出てきた。
「ご、こめんなさい......ひっく......ごめんなさい......ぅぅぅ......」
「勇、ビックリしたら漏れちゃうこともあるんだよ。トイレに起きてきたんだろ?」
「ぅ......ぅ......ぅ」
「はい、足上げて......勇は謝ることないから。はい、こっちの足も......」
幸兄ちゃんは、ボクのビチョビチョになったズボンとパンツを素早く脱がしていく。
シャワーから出るとすっかり水溜まりはなくなって、キレイになっていた。リビングでは、広くんが温かいミルクを用意して待っていた。
「幸、ありがとう。もう、大丈夫だから先に寝ていいぞ」
「ふわぁぁ......ああ、そうするわ」と言ってボクの頭に手を置いた。
「ごめんなさい」
「勇、こういう時はありがとうだ」
「あ、ありがとう......ゴザイマス」
「うん。どういたしまして」
幸兄ちゃんはニッコリ笑って、部屋を出て行った。
ミルクを飲んで、トイレに行って、広くんと一緒に寝室に入る。自分の布団に入ろうとしたとき「今日は、こっちにおいで。一緒に寝よう」と広くんは布団を広げて手招きする。
「でも......」
今日は布団が濡れてる訳じゃないし......
「僕ちょっと寂しくてね。眠れないかもしれないから、勇とギューっとして寝たいんだ。勇に甘えさせて」
大人でも甘えてもいいんだ......
広くんはボクの心を読んだかのように、言葉を続ける。
「大人でも寂しいときは甘えるんだよ」
そう言うと、ボクの腕を引っ張って布団の中に入れて、背中に手を出してまわしてギューって抱きしめた。
トクン、トクン、トクン......
広くんはボクに甘えさせてって、言ったけどボクの方が広くんに甘えてるみたいだ。でも、それが心地良くて朝までぐっすり眠れた。
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