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大丈夫が聞きたくて
「ごめんなさい……」
「大丈夫、大丈夫。一緒にお風呂行こう」
布団に描かれた世界地図を残して勇と風呂場へ向かう。
勇が家に来て2ヶ月。最近の勇は、色々な失敗が非常に多い。今日のおねしょも、今月に入ってもう5回目だった。日中、間に合わずパンツを濡らしたり、水たまりを作ることもあった。
確かに来て間もない頃、失敗することが2回あったけど、その後は全くなく、慣れない生活の為かと思っていた。ただ最近は、おしっこの失敗だけでなく、物をこぼす、落とす、なくす、忘れるなど些細な失敗が多い。
慣れてきて気が抜けたのかな......
「父さん、洗濯機回して乾燥もセットしておいたから」
「ああ。すまんな。ありがとう……勇のことなんだけど、最近、何か変わったことないか?」
勇の布団などの片付けをしていた幸司にそれとなく聞いてみる。
「そうだなー。最近、失敗が多いなーとは思う。今朝のおねしょもだけど、昨日の晩飯の時、また水こぼしてたし」
「そうなんだよな。あんなにキチキチしてたのに、どうしちゃったんだろう……」
「まあ、緊張が解けたってことじゃない?初めはホント、ガッチガチだったしね」
「そうだな。良い方に捉えておくか……」
今朝、おねしょしても大丈夫って言ってくれた。ご飯の時にお水こぼしたけど、気にするなって頭撫でてくれた。明日は、給食袋持って帰ってくる日だけど、忘れても大丈夫って言ってくれるかな。また、一緒に学校まで取りに行ってくれるかな......
そんなことを考えながら、ボクは眠りについた。
最近の失敗は、全部わざとだった。今朝のおねしょも、少し早く目が覚めて、わざとお布団の中に漏らした。
この家に来てすぐの頃、大きな失敗を2回してしまったけど、広くんも幸兄ちゃんも「大丈夫」って頭を撫でてくれてギューってして、「勇はいい子だよ」って言ってくれた。
でもボクは不安だった......
もしかしたら、もう大丈夫って言ってもらえないんじゃないかと。やっぱりボクは、いい子じゃなくて、広くんにも幸兄ちゃんにも好きになってもらえないんじゃないかと.....2人のことが好きになればなるほど、ボクの不安はどんどん大きくなっていった。
だから、わざと失敗して試してしまう。
「大丈夫だよ」の言葉を待ってしまう。
「あれ?勇。今日、給食袋持って帰る日じゃなかった?ないと洗濯できないよ」
「あっ、ごめんなさい。学校に忘れ……マシタ……」
「……そっか。じゃあ、取りに行こうか」
「ごめんなさい」
「大丈夫だよ」
あぁ……よかった……
また、ちゃんと“大丈夫”って言ってくれた。
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