大丈夫が聞きたくて

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 落ち着いた頃、幸兄ちゃんがいつものホットミルクを持ってきた。 「大泣きした後は、これだろ?」 「おっ。幸もわかってるねー」 「はい。勇」 「ごめ…」 「ごめ?」 「あ、ありがとう……ゴザイマス……」 「うん。よし」  ソファーに並んで座って、3人でホットミルクを飲んだ。いつもと同じで温かく甘い。 「勇、さっきのお話していい?……どうしてお水をこぼそうとしたの?今日だけじゃないよな」 広くんが飲み終わったカップをテーブルに置いて、ボクの顔をまっすぐに見つめながら優しく声をかける。ボクはビクッと身体を固くしてして下を向いてしまう。  全部バレてたんだ…… 「さっきも話したけど、怒ってるわけじゃないんだよ。ただね、理由がわからないと色々と考えちゃうんだ。勇は、もしかしてこのお家が嫌なのかなーとか、僕のことが嫌いなのか……」 「ちがっ!!」  ボクは広くんの言葉を遮って声を出す。 「違うの!……この家は大好き。広くんも幸兄ちゃんも大好き」 「うん」 「でもボクは失敗しちゃったし、いい子じゃないかもしれない。いい子じゃないと広くんも幸兄ちゃんもボクのこと好きになってくれないのに。もう大丈夫だよって言ってくれなかったら、ボクはいい子じゃなくなって、2人ともボクのこと好きじゃなくなる……うっ……うっ……う……」  ボクの目から、また涙がこぼれてくる。 「だ、だから……広くんに大丈夫だよって言われたら、まだボクの好きでいてくれてるって思った」 「そっかぁ。勇は、そんなこといっぱい考えて不安になってたんだな」  広くんは、ボクの顔を胸に埋めて呟いた。 「そんなこと全然ないのに……バカだなぁ……ごめんな、不安にさせて」  そして両手でボクのほっぺたを挟むと、広くんの顔に近づけてゆっくり話し始める。 「勇、いい。よく聞いてよ。僕も幸も勇が大好きだよ。おねしょしちゃっても、おもらししちゃっても、お水をこぼしても、忘れ物をしても、どんな勇でも大好きだよ。間違っちゃうことや失敗することは誰にでもあるから、それで好きじゃなくなることはないんだよ。それにね、もし勇がいい子じゃなかったとしてもね、僕の好きの気持ちは変わらないよ。でもね、できるのにわざと失敗するのは、僕も幸も悲しい気持ちになっちゃうな。勇は、僕が悲しい気持ちになってもいい?」  ボクは大きく首を振る。 「じゃあさ、僕が悲しい気持ちにならないように、わざと失敗しないってお約束できる?」 「うん……」 ボクは頷きながら、またボロボロと涙が溢れたけど、広くんがボクの涙を止めるように、またギューと抱きしめてくれた。  次の日から、広くんは何もなくてもボクをたくさんギューとして「好きだよ」って言ってくれる。幸兄ちゃんは、いつも頭を撫でてくれる。ボクはすごくすごく、嬉しいんだけど、ちょっとだけ戸惑っちゃう。  ボクは2人のことが大好きだから、悲しい気持ちにさせたくない。だからもう、わざとはしないって、強く強く決めたんだ。
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