寂しい3日間

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寂しい3日間

「おはよう」  カーテンを開けて眩しい朝日を入れながら、起き上がったボクに広くんは声をかける。 「おはよう……ございます」  挨拶をしたボクと目が合い、広くんは手招きしてボクを呼び、力いっぱいボクを抱きしめる。そして「おはよう、勇。大好きだよ」と囁くんだ。  ボクはすごく嬉しいんだけど、どうしたらいいのかわからなくて、立ち尽くしてしまう。これが、最近の毎朝の日課になっている。 「あ、幸。今日もお迎えお願いできるか?」 「ああ、今週はテスト期間でバイトも入れてないし、いつでも行けるよ」 「悪いな。帰りもいつもより遅くなると思うから、勇と先に食べてて。冷蔵庫に昨日の肉じゃがあるから」 「わかった。最近、忙しそうだね」 「ああ。でも、今日で落ち着くから」 朝、広くんと幸兄ちゃんのそんな話しをしているのを、隣で聞きながらご飯を食べていた。 「勇くん、お迎え来たよ」  玄関で勇を呼んでもらうとすぐにやって来た。 「お待たせ。帰ろう」 「うん」  何だか、ちょっと残念そうな顔の勇。   「そんなしょぼくれた顔すんなよー。父さん、お仕事だって」 「違うの。違う……」  ちょっとからかって、不貞腐れた声を出すと、勇は必死になって首を振る。 「アハっ。そんなに必死になんなくったって、わかってるって」  そんな勇のことが可愛くて、勇の頭に軽く手を乗せる。夜ご飯も勇と2人。考えてみれば、勇と2人きりの夕食は初めてだった。 「広くん、お仕事忙しい?」 「ん?あー、そうみたいだな。何かイベントの準備してるみたい」 「イベント?」 「うん。オレもよく知らないんだけど、チラシとか?作ってるんだって」 「そっか……」 「さみしい?」 「えっ。いや……うーんと……えっ……と……」  そう聞くと、困った顔をして言葉を詰まらせる。勇は、感情を表現するのが下手くそだ。  素直に寂しいと言えばいいのに…… 「寂しいときは、寂しいと言ってもいいんだよー」 「……さみしい……」 「ふふっ。うん、それでいい。でもね、今日で忙しいのも終わるみたいだよ」 「ほんと?」 「うん。今朝言ってた」  勇の嬉しそうな顔を見て、今朝の父さんとの会話を思い出していた。 「最近、勇、失敗しなくなったよな。父さんの毎日のハグが効いてるんじゃない?」 「そうだといいんだけどな……」 「あれ。なんか心配?」 「うーん。勇はさ、僕が抱きしめても固まっちゃって、腕を回してくることないんだよ……僕の自己満足になってなきゃいいけど……」 「そう?ハグされると安心するし、考えすぎじゃない?」 「へー。幸はそうなの?じゃあ、久し振りにギューってするか?ほら、幸おいで」  父さんはニヤニヤしながら、両手を広げる。 「……んなっ……何言ってんだよ。気持ちわりーな。勇とやってろよ」 「なーんだ、つれないな……でも、幸も気にかけて、よく勇の頭を撫でてくれてるよな」 「う、うるさい!もう、学校に行く!」  後ろを向いて、足早に立ち去ろうとするオレに、後ろから声がかかった。 「ありがとな」 「……ん」  照れ臭くて、そのまま立ち去った。  父さんの気持ちは、ちゃんと勇に届いてるよ……少し元気になって、ご飯を食べ始めた勇を見てそう思った。
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