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犬走の独特な感性というべきかその反応に猫屋敷はどう反応するのが正しいのか迷った挙句流すことにした。というよりもあまりにもツッコミどころが多く、猫屋敷の力量では捌けなかったのだ。
またもや会話に一区切りついて、猫屋敷は十字架と磔にされている犬走を見つめた。床に広がっている木材が、十字架に姿を変えたと思うと感心せざるを得なかった。
「ねぇねぇ。」
「な、何?」
「……これ解ける?」
「…え?」
「いやこれさ…自分じゃ解けないなって。」
「あ、当たり前でしょ…?」
「ね、リンリン。解いて?」
「え、でも下手に触って壊すの申し訳ないし…。飲み物買うだけならそんなに…。」
「お願〜い?」
「…わ、分かった。」
猫屋敷はそう言ってお腹あたりに括り付けられていたロープを解いてやる。そして腕を括り付けていたロープも解き─。
「─っ?!」
「…ん。あれ?リンリーン?…凛、リンリン?」
「……解けない。」
「え?」
「解けない。」
聞き返す犬走に申し訳なさそうに猫屋敷が首を横に振る。あまりにも結び目がきつく、爪だろうが指だろうがロープ同士の隙間に入り込む隙がなかったのだ。
巻きついているロープそのものはゆとりがあるが、問題は結び目だ。犬走なら解けたかもしれないが、その犬走は今縛られている側だ。状況を理解していて、今救えるだけの心の余裕を持ち合わせているのは猫屋敷だけだ。
助けを求めるにしても猫屋敷が大声で「ロープが解けないので助けてください!」などと言えないのだ。
「リンリン、どうしよう?」
幼馴染はこちらを見て、目をうるうると可憐に光らせていた。子犬がくぅんと小さく鳴くような姿を彷彿とさせる犬走の様子は、猫屋敷をより一層困らせた。
ロープを切るにしても、大道具班の許可もなく何かしらを切断するだけの勇気も度胸も愛嬌もない。
「……えっと。えーと…。」
「凛〜…。」
「えーっと…。」
「ごめーん!ちょっとついでにコンビニにお菓子買いに行ってたら、時間かかっちゃった─あぁっ?!モカごめん!ごめんごめん!猫屋敷さんもごめんね!?なんか…うん、ごめんね。」
戻ってきたクラスメイトが必死に謝る姿に、こちらまで申し訳なくなって「いえ…」とふるふると首を横に振る。
あまりにも異常すぎる事態に猫屋敷は困ったが、丸く収まり、ホッとしていた。
─しかし、まだまだ序の口であった。
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