天涯の花

8/34
前へ
/36ページ
次へ
そんな忠晴の様子に いち早く気づいたのは久里。 初めは (間違いがあっては…) 慌ててしまったが、 冷静になると “ただ生きている” そんな息子が不憫で不憫で 考え倦ねた末に 「嘉を、忠晴の下女として  引き取るのは如何でしょうか?」 夫に頼んだ。 下女…即ちは 先行き短い忠晴の“慰み者”の 意を含んでもいたのである。 しかも忠晴は病い持ち、 下手をすると嘉も…。  「妾奉公みたいな話っ!!   馬鹿にしてっ!」  「隣村には後添えにと   言ってくれる方も   おるんじゃ。こんな話は…」    激怒して断わるという 小屋主夫婦を前に  「私はお使えしたいです!」 嘉は素直に喜んだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加