天涯の花

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しかし… 喜ばなかったのは 忠晴自身であった。 「なんて人間を見下げた  ことを言うんだ、母さん!  死んでゆくかも知れぬ息子の  玩具に人を買うなんて!」 塀越しに怒鳴る声には 咳を伴うほど。 嘉を冒涜する母に 煮えくり返る(はらわた)を どうにも抑えきれなかったのである。 けれども…けれど… (あ、そういうたら…) 母に怒鳴ったそのあとで はたと雇人達の噂を思い出した。  “女相撲が出来なくなると   娘達は売られるだろう” 「母さん、だったら…!」  
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