天涯の花

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突貫工事で 忠晴の離れの敷地に もう一つ、小さな家が建った。 一間に土間、風呂、厠。 忠晴の離れとの間には 井戸横に小川のような水路。 医師と看護婦の指導を受けて 忠晴が父・和晴に強請ったもの、  「看護婦の扱いで   嘉を雇うてくれ」 それが忠晴の要求だったから。 (病気さえ移さなければ、  郭よりはマシな暮らしは  させてやれる。給金を  貯めておけばいずれ  ここを出ても次の暮らしの  用意にもなる) 忠晴はそう考えた。 もっとも (汚らしい男共が  嘉を抱くなんてっ) それを想像しただけで 虫酸が走る…というのが、 本音であったのだけれど…。    
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