天涯の花

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まだ幼い頃… 食うや食わずの嘉の村に 女相撲がやってきて… 垢にまみれて腹減らし ボンヤリと小屋の外から 観ていた嘉を 拾うてくれたのが 小屋主夫婦だった。 似たような境遇の子供や女達と 巡業しながら風まかせ…。 それでもあのまま生家にいたのでは (いずれは飢えて死んでいたはず) そう思うと幾ばくかの金が 小屋主夫婦に入るならと 眞島家の誘いに嘉は乗ったのだが (あの方なら…) 申し出の男が、 川辺りで佇む“美しい方”と知ると 尚の事、 (必ず丈夫にして差し上げたい) …そうも嘉は思ったのだ。 案の定、後からは “看護のため”と訂正もあり (やはり“あの方”は清き人) 嘉の胸は高鳴った。
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