天涯の花

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巡業が千秋楽を迎えた翌日 三人の娘が村に残った。 一人は四十男の後妻に、 一人は鍛冶屋の嫁に、 そして嘉は忠晴のもとに。 久里に伴われて 忠晴の離れの門を潜ると 「おとぎ話みたい…!」 家と家の間を流れる 水路にはポツポツと 色々な花が咲いていて 整頓された植物棚には仙人掌。 それから 「あれは坊ちゃまが  お描きに?」 忠晴の家屋の縁側には bae8f961-d6a3-42f0-b30b-467ad1527fd7 筆に任せて忠晴が描いた絵。 (今日“陽の花”が来る!) そう思うと描かずには おれなかった向日葵。 「あ、ああ…そんなので  良いなら…あげるよ」 「よろしいのですか?!」 水路を渡した小橋を回り、 嘉はその紙をそっと持った。   嘉は絵に見惚れ… 忠晴は、その嘉に      見惚れていた…。
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