天涯の花

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  「こんな小さな“箱”に  閉じ込めるのは  申し訳ないのだが…」 花壇の横の嘉の部屋を指し ボソっと忠晴が言うと 「何をおっしゃいますやら、  坊ちゃま。私が生まれた家は  これより小さく屋根は穴ぼこ、  そこへ親兄弟が犇めき合って…  こんな美しい部屋で  風呂まで頂けるなんぞ  果報者でございます、私は」 それは心底の言葉であると 嘉の働きぶりで忠晴は判った。 いつ寝ているのかと言う程に 嘉が“静止”しているのを 見ることなどなかったから。 水路を挟んだ離れから “リン”と一鈴鳴らしただけで 嘉は文字通り飛んで 忠晴の元へ。  
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