天涯の花

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  医師の指示も的確に 理解出来る嘉に    「こりゃ勉強したらほんとに   看護婦になれるぞ」 月に一度来てくれる 和歌山市内の医師も驚いた。 「マスクなんぞして  御無礼でありますが  私が倒れては坊ちゃまに…  せっかく呼んで下さった  坊ちゃまに申し訳がたちません」 忠晴との距離にも、病いに対する “毛嫌い”などは微塵も 見せない嘉。 塀の向こうから 嘉を恋しがり、  「よし〜よし〜」 と、声をかけてくる 忠晴の弟妹達にも  「はいはいー!   嘉はここでございます。   はっけよいよい!   はっけよぅぅぅい!」 と、陽気な声を返すだけ。 他の奉公人とも 忠晴の家族とも 自ずから距離を取った。 ただ…いつもアルコール消毒を している手指は赤く腫れていて、 それを癒やす塗り薬になるようにと 忠晴はアロエを山ほど植えた。
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